起業家

2023.06.30 17:30

食品ロス削減ECのクラダシが上場 「社会的事業」を成立させる条件

代表取締役社長の関藤竜也と取締役執行役員CEOの河村晃平(撮影=曽川拓哉)

ターニングポイント3 ガバナンス強化と事業成長両立を実現

──IPOを目指した経緯、そして実現までの道のりを教えてください。
 
関藤:​IPOを目指した主な目的は、社会的信用を得ることです。廃棄物の量は、上場している大手企業の方が中小企業よりも多いので、そうした企業と取引をしていくためにも、IPOは一つの重要なポイントです。
 
また昨年は、経営執行スピードをアップすること、そしてガバナンスの強化を目的に、他社での執行役員経験がある河村をCEOにしました。
 
上場すれば、会社は株主のものになるので、もう少し組織体制を整えてからでも良いのではという意見もあります。ただ、ソーシャルビジネスのファーストランナーであるという先行者メリットや社会的インパクトも考えたうえで、最短で上場するというプランを二人で描いてきたので、それを実行しました。
 
河村:IPOを実現するうえで審査されるのは「事業を成長させられるか」と「ガバナンスがしっかりしているか」だけです。直近3年の平均売り上げ増加率は74%なので、良い急成長組織を作れていると感じています。
 
そのポイントは、やはり「人」です。クラダシは、ソーシャルグッドカンパニーであり続けるというミッションを掲げ、それに共感した仲間が集まっています。そして、もう一つのポイントは、集まった人たちを組織化するため、社内の法整備を進めたことです。集まった人材を成長の源泉とするためのガバナンスを明確に作ったことが、IPOを実現できた要因だと考えています。
 
──今年に入り、子供食堂との提携や初の常設店のオープンなど、新たな試みが続々と進んでいます。
 
河村:IPOはあくまで1つの通過点でしかありません。成長をさらに加速させるための社内インフラも、今まさに整ってきています。中長期的な視点で考えると、これから多くの試練と直面すると思いますが、そうした試練を楽しめるようなメンタリティでやっていきたいと考えています。
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Bコープ取得企業として日本初の上場を果たしたクラダシ。今後、経済的利益を追求する株主から圧力がかかることも考えられるなか、同社がこれまでと同様に、株主利益と社会利益の双方を追求できるかどうかが注目される。

取材・編集=露原直人 文=尾川真一 撮影=曽川拓哉

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