ターニングポイント2 時流を逆算し起業
──アイデアから実際にビジネスにするまでの過程を教えてください。関藤:ビジネスを立ち上げる時にまず考えたのは、タイミングです。特に社会性のある事業は、早すぎても遅すぎても受け入れられません。2014年の起業時、照準を合わせたのは、SDGs採択のタイミングでした。
もともと、SDGsの前身として、ミレニアム開発目標(MDGs)というものがありました。これは2015年をゴールに設定したものだったので、その年に新しい何かが採択されるだろうと予想し、そこから逆算して事業準備を進めました。
少なくとも100社の賛同を得られないと十分な供給ができず、ビジネスとして成立しないモデルだったので、たくさん営業に回りました。
当時は、「サステナブル」といった言葉が浸透する前だったので、CSRや企業イメージの観点から、「食品廃棄は今後社会課題化されるので、今から対策しましょう」といった提案をしていました。
ただ、理解は得られましたが、食品を提供してもらえるかは全く別の話。なぜなら、会社のブランドイメージなど、さまざまな問題が絡むからです。最初の100社集めは苦労しましたが、しばらくすると読み通り時流が後押ししてくれるようになり、「SDGsやってますか?」との問いかけで、話が進む企業が増えました。
──ソーシャルビジネスでは、収益化に苦しむケースが多いなか、クラダシは2期目で黒字化しました。そのポイントは何だったのでしょうか。
関藤:とにかくビジネス目線で厳しく数字を見ていたことでしょう。例えば、クラダシのビジネスモデルは、設備や流通網といった初期費用がほとんどかかりません。細かいですが、売掛金と買掛金のサイクルも、譲れないところは大企業相手でも譲りませんでした。支払い期日の延長などといった部分が怠惰になることを許容しないということです。
最近はインパクトスタートアップが増えていますが、早期の黒字化は必須条件だと思っています。
河村:私たちは、社会性、環境性、経済性の3つを成立させることを心がけています。クラダシ自身が持続的に大きくなり続けるために1番重要なのは、やはり経済性なので、早期黒字化は重要な目標でした。
関藤は、社会的に良いことをやりたいという思いをもっていますが、経済性が成立しないと絶対にGOを出しません。経済性を追求することで、社会性、環境性が最大化される感覚です。
クラダシのビジネスが大きくなればなるほど、メーカーの廃棄物の削減量が増えます。 するとユーザーは、商品の選択肢が増える。自分が欲しいものをお得に買うとそれが社会貢献にもなります。「Bコープ」を取得した際も、 「クラダシのビジネスモデルそのものがソーシャルだ」という評価をもらいました。