エンターテイメントをメタバース構築のツールに
膨大な数の人々をメタバースの世界に引き込むにはどのような手段をとるのが最も効果的かを問われると、スティーブンスン氏からはエンターテイメントの威力という答えが返ってきました。「メタバースにエンターテイメントが持つ魅力を組み合わせれば、数多の人々を引き込むことができるでしょう。エンターテイメントがどのように変化してきたかを振り返ってみてください。
今、私たちは、多くのクリック数や視聴回数、注目を次の世代から獲得するにはどうすればよいかに知恵を絞るようになっています。今後は、ミュージシャンやクリエイターと、楽しませる対象を直接つなげるにはどうすればよいかが多くのメタバースのモデルにおいてポイントになっていくでしょう」
マシュメロやトラビス・スコット、ジャスティン・ビーバーといったミュージシャンは、すでにバーチャルでライブを行っています。エンターテイメント業界ではメタバースのムーブメントが加速しつつあるのです。
一方、メタバースのテクノロジーの普及において一歩先を行くのがゲーム業界。『Roblox』『マインクラフト』『フォートナイト』などのメジャーなゲームではすでに、仮想空間でのコラボレーションや交流という要素が強く感じられるようになっています。メタバース開発においてトップスキルを開発・維持して主導的な役割を果たし続けているのもゲーム業界です。
スティーブンスン氏は次のように語っています。
「ゲーム業界は、メタバース開発おいていろいろな意味で変化をリードしており、この業界には、ゲーム以外の分野でメタバース関連のソリューションを展開していくのに必要な才能が数多く集まっています。強力な牽引力を発揮して、エンターテイメントを通じて多くの人をメタバースに引き込んだゲーム業界の手法は見習うべきでしょう。
メタバースを社会の他のセグメントにも展開するとするならば、ゲーム業界のスキルと、他のセクターのためのメタバース・ソリューションを考え出す彼らの意欲の両方が不可欠です」
いわゆる「シリアスゲーム」が他の業界にどのように役立ち、さまざまな事業でのメタバース普及を実現していくかについては、スティーブンスン氏は次のように考えています。
「シリアスゲームはまだ誕生して間もないテクノロジーです。エンターテイメント性を高めて魅力的なものにすることができれば、どの業界でも普及させることができるでしょう。
シリアスゲームとバーチャルリアリティ(VR)は、安全・危機管理のトレーニングなどにも取り入れることができ、核などの重大な分野でも技術者のトレーニングに応用できるでしょう。ただ、科学的に正確なシミュレーションが求められるので、その実現にはかなりの時間が要するかもしれません」