世界で最も平和な国と、最も平和でない国
世界で最も安全な国を評価する年次報告書「世界平和度指数(Global Peace Index)」は、今年で17回目を迎えた。このほど発表された2023年版ランキングでは、アイスランドがまたも首位をキープし、次いでデンマーク、アイルランド、ニュージーランド、オーストリアと続く。これらの国の多くは、経済誌『エコノミスト』の調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)による「世界で最も住みやすい都市」2023年版ランキングでも上位を占めている。2023年版の世界平和度指数によれば、世界の治安は昨年と比べてやや悪化しているようだ。対前年比の傾向は昨年版も同様だったが、その時点では世界的なパンデミックの影響によるところが大きかった。
今年の報告書は、多くの国が軍事費を削減している一方で、より多くの国が対外紛争に関わっていることを強調している。この1年間に世界各地で起きた紛争による死者数は、今世紀に入って(あるいはルワンダ虐殺以降で)最も多い。世界の半数以上の国(56%)が対外紛争に関与しており、紛争がいかに国際化しているかを示している。
興味深いポイントがいくつかある。
・アイスランドは2008年以降一貫して首位を維持し、地球上で最も平和な国とみなされている。当然ながら、アイスランドは最も幸福な国としても世界第3位にランクされている
・欧州は世界で最も平和な地域であり、最も平和な上位10カ国のうち7カ国が欧州の国だ。しかし、ロシアとの関係緊張化のため、欧州の平和度は15年前よりはるかに低下している
・政情不安の指標は昨年1年間に59カ国で悪化し、改善したのは22カ国のみだった
・ウクライナでの戦争が安定性を揺るがしているのは明らかだが、実際にはウクライナ紛争の死者数(約8万3000人)よりも、エチオピア紛争の死者数(約10万人)のほうが多い
・2008年以降、世界的に最も悪化した2つの指標は、暴力的なデモと対外紛争である
・調査では、米国における殺人発生率は西欧全体の平均値の6倍に上り、その背景には銃を用いた暴力と政治的緊張があることがわかった
・世界で最も平和でない国の顔ぶれは、ここ数年変わっていない。最下位は8年連続でアフガニスタンで、続いてイエメン、シリア、南スーダン、コンゴ民主共和国が並ぶ
・最も平和でない国と最も平和な国の格差は拡大し続けており、国や地域の軌道修正がいかに難しいかを物語っている