プリゴジンの武装蜂起の罪は刑事事件として立件された。1日かけて、ワグネルの分遣隊がロストフに到着した。夕方、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領との会談の結果、プリゴジンはモスクワへの「行進」を中止したことが明らかになった。
今回の「反乱」は収束したかたちではあるが、欧米のメディアはこの事件をどのように評価し、どのように記事にしたのだろうか。以下、まとめてみたい。
中国「環球時報」:
「プリゴジンの反乱はロシア秩序の "穴 "を突いたものの、プーチンを過小評価すべきではない」
胡錫錦・環球時報元編集長、パブリシスト:
「ワグネルのロシア人傭兵の反乱は大きな驚きだったが、突発的でもなかった。同時に、反乱は流血することなく阻止された。 ワグネルのリーダープリゴジンは、ロシアの指導者ウラジーミル・プーチンの同盟国であるベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の仲介による交渉に同意した。このことは、プーチンがウクライナ紛争やワグネルの反乱など、最も困難な問題を解決するための政治的資源をまだ自由に使えることを示していると私は思う。
プリゴジンのとった軍の反乱という行動は、通常の論理とはまったく異なるものだ。そこには明らかな未熟さと衝動性があり、プリゴジンは、ワグネルの戦士を反乱に駆り立てることで一体どんな政治的目標を達成するつもりか、前もって考えていなかっただけと思う。
反乱は間違いなくクレムリンの信頼性に影響を与えるだろうが、今のところ、その影響は、プリゴジンの交渉への同意という終結の仕方によって、限定的なものにとどまった。
次の段階で、プーチンはプリゴジンがロシアの政治システムに開けた”穴”を塞ごうとするだろう。プーチンがこれを実行できるかどうかは未知数だが、複雑な問題を解決するプーチンの能力はどうやら過小評価されるべきではないようだ。
米「ニューヨーク・タイムズ」紙:
米国は元来、プリゴジンがロシアに対する軍事行動を準備しているのではないかとみていた。
プリゴジンは残酷なことで知られており、もし高官を排除することに成功すれば、おそらく予測不可能な指導者になるだろう。そして、核武装したアメリカのライバルが混乱に陥る可能性は、多くの新たなリスクをもたらす。
英「テレグラフ」紙:
ウラジーミル・プーチンにとって、これは終焉であり、道の終わりである。エフゲニー・プリゴジンと彼の傭兵たちが、この武装蜂起を生き延びることは可能だが、取り返しのつかない損害を被る可能性もあるだろう。プリゴジンは、クーデターではなく、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相とワレリー・ゲラシモフ連邦軍参謀総長兼第一国防次官の無能を非難する行為であると主張している。
仏「ルモンド」紙 :
ワグネルの蜂起に対し、ウラジーミル・プーチンは自らの権威を弱める代償として流血を避けるだろう。
ロシアは日常に戻った──。ロシアのEC大手「ワイルドベリーズ」にはワグネルのロゴ入り商品が戻ってきた。モスクワ南部の道路は、前日にショベルカーで壊された後、再舗装されている。ワグネルは蜂起を、6月24日のたった1日で100万人が住む都市を占領し、200~300キロ離れた首都に、深刻な抵抗を避けて接近することに成功した。
中国「環球時報」:
ワグネルの反乱でプーチンの権威が弱まったという、西側の希望的観測がある。