健康

2023.06.30 12:00

ガスコンロの炎から発がん性物質「ベンゼン」発生、換気扇で除去不可

安井克至
研究者はさらに、IH(電磁誘導加熱)コンロで2度調理してベンゼン濃度を測定したが、検出されなかったと述べている。「また、火力を強にした電気コイル調理器やIHコンロ、電気オーブンを摂氏177度で使用した場合は、天然ガスやプロパンガスのコンロを使用した場合と比べて、ベンゼン濃度の中央値が10分の1から25分の1だったこともわかった」という。

ガスコンロを燃焼させると有害な化学物質が発生することは、これまで複数の研究で示されている。例えば、強力な温室効果ガスであるメタンや、血液の酸素運搬能力を低下させる物質である一酸化炭素(CO)、喘息と強い関連性がある一般的な大気汚染物質である二酸化窒素(NO2)、広く知られる発がん性物質であるホルムアルデヒドといった物質だ。

ガスコンロを使用する家庭で育った子どものほうが、生涯にわたる喘息の発症リスクが24%、小児喘息を発症するリスクが42%高いことが、ガスコンロに関する41以上の研究で証明されている。

今回の研究結果で、ガスコンロからIHコンロへの変更は、健康面で望ましい決断である可能性が、いっそう浮き彫りになった。子どもと親自身の循環器系にとって望ましいばかりか、血液細胞がんのリスク低減にもつながるのだ。ベンゼンへの長期的な暴露は、白血病とリンパ腫の発症リスク上昇と関連している。

研究チームは、室内の空気汚染と、それが人々の健康に及ぼす影響について、早急に理解を深める必要性があると訴えた。なぜなら、ほとんどの人が、87%の時間を室内で過ごしているからだ。

今回の研究論文の筆頭著者で、スタンフォード大学の大学院に在籍するヤナイ・カシュタンは声明で「私はたまたま、電気コンロが設置されている賃貸アパートに住んでいる」と述べている。「この研究に着手するまでは、特に気にしたことはなかった。しかし、ガスコンロによる空気汚染について知れば知るほど、ガスコンロのない家に住んでいてよかったと安堵している」

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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