教育

2023.07.06 10:00

STEM分野にもっと女性を。子供が熱狂する科学ショー

休日の商業施設で音楽とともにステージ上で激しくダンスする女性。右手に握られているのは、生クリー ム入りのペットボトルだ。ダンスが 終わると、ボトル内ではバターができあがっている─ 。五十嵐美樹のサイエンスショーでの光景だ。
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サイエンスエンターテイナーを名乗る五十嵐。大学在学中「ミス理系コンテスト」グランプリ受賞を機に、子ども向けの科学実験教室やサイエンスショーを全国各地で開催し始めた。卒業後も企業勤務の傍ら科学館などでショーを続けた後、「子どもたちが科学を楽しいと感じるきっかけをつくりたい」とフリーに。科学に興味がない子どもたちにこそ見てほしいと、商業施設や地域のお祭りなどでもショーを開催。 買い物や屋台に夢中な子どもたちはなかなか足を止めてくれない。悩んだ末生まれたのが幼少期から習っていたダンスを取り入れた実験だ。

国際的に見ると、日本の子どもたちは理科の点数で国際平均を大きく上回るものの、理科を楽しい・ 役に立つと思う割合は中学生で国際平均を下回り、学年が上がるにつれて減る。STEM分野の学部に進学する女性の割合ではOECD加盟国中ワースト1位。幼少期に科学に触れる経験の少なさ、自己効力感の低さが原因であると先行研究でもいわれてきた。

五十嵐のショーは未就学児〜小学校中学年向けだが、電磁気や高分子など中高で学ぶ内容も扱う。「幼少期に科学現象を見て体験することで、学年が上がっても題材に実感をもって楽しく学べるのでは」。教鞭をとる大学では科学教育の研究に励み、昨年科学教育を考える国際イベント「Falling Walls」で日本人で初めて科学の普及に貢献した部門の Winner 20人に選出された。「日本ではどのような科学プログラムがよいのか試行錯誤しています」
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10年ほどの活動でファンも多様に。ショーに夢中な子どもを見て「理科が好きだったのね」と気づく親もいる。環境や性別にかかわらず科学が親しまれる世界を目指し、五十嵐は 科学の楽しさを届け続ける。


いがらし・みき◎東京生まれ。上智大学理工学部機能創造理工学科 卒業、東京大学大学院修士課程修了。大学在学中より科学実験教室やサイエンスショーを開催。大手電機企業やベンチャー企業を経て各地でイベントを行う傍ら、NHK高校講座「化学基礎」等へのレギュラー出演や、東京都市大学人間科学部特任准教授等も務める。

文=菊池友美 撮影=林 孝典

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