薄毛治療に使われる育毛剤などで知られる医薬品大手アクタビスは、美容整形のしわ取り施術に使用されるボトックスで有名な大手アラガンを660億ドル(約8兆円)で買収した。その後アクタビスは買収したアラガンに社名を変更した。アラガンはヒアルロン酸やまつげ育毛剤など、様々なヒット商品を開発した有名企業だ。
そのアラガンは6月15日に、Kythera社を21億ドル(2572億円)で買収した。Kythera社のKybellaは皮下に注射し脂肪を溶解させることで二重アゴを治療する新薬で、4月にFDA(アメリカ食品医薬局)に認証された。治験では1022人の患者の二重アゴが解消したというデータが出ているが、副作用の可能性も指摘されている。あざや嚥下時のトラブル、笑顔が左右不均衡になること、顔筋の筋力低下などだ。
Kybellaは美容形成関連で有名なアラガン社にぴったりの商品と言える。しかし、21億ドルという買収額はこの商品が年間5億ドル売れるという予想に基づいたものだ。この買収は高くついたのではないだろうか?
投資顧問会社BMO Capital MarketsのDavid Marisは、これは賢明な取引であり「美容医療業界でリーダーシップを執りつづけるために、アラガンは潜在的にヒットしそうなテクノロジーに常に関わりを持つ必要がある。リスクもあるがアラガンこそがKybellaをうまく商品化できるだろう」と述べた。他の有名美容整形外科医もまた、「もしも脂肪吸引術のコストより安く提供されるならば、Kybellaには大きな可能性がある」とコメントした。
しかし、調査会社バーンスタイン・リサーチのロニー・ギャルは勘定に合わない取引だと述べている。
「アラガンは今後も成長していく企業ですが、この取引額は少し高すぎます。オークション的な状況で価格が決定した疑いがあります」
ギャル氏はKybellaがそこまではヒットしないだろうという理由を3つ上げている。第一は美容医療薬品で売り上げが5億ドルを超えたものはほとんどないということ。第二にKybellaの増産には時間がかかりそうだということ。第三にKybellaの特許は2025年から2030年の間に切れてしまい、同種の薬品が登場してくるだろうという懸念だ。
しかし、ギャル氏はKythera社が開発中の薄毛治療薬には期待しているという。