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2023.06.30 09:00

中国EVメーカーに押し寄せる「中東マネー」

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アラブ諸国と中国が経済関係を強化する中、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の政府系投資ファンドが先日、上海に本拠を置く電気自動車(EV)メーカー、蔚来汽車(NIO)に10億ドル以上を投資することで合意した。中東諸国は石油依存からの脱却と産業の多様化を進めており、今回の合意はその最新の事例だ。

NIOは6月20日、モビリティ分野に特化した投資会社CYVNホールディングスに新株を1株当たり8.72ドルで8460万株発行すると発表した。CYVNホールディングスは、現金で7億3850万ドル(約1070憶円)をNIOに投資する。NIOは、CYVNがNIOの既存株主であるテンセントの関連会社から4010万株を取得することも合わせて発表した。

米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、テンセントの関連会社は6月23日に株式の売却を完了している。この取り引きでCYVNは3億5000万ドルを支払っており、NIOへの投資総額は約10億9000万ドル(約1570億円)に達した。

CYVNはNIOの株式7%を保有し、取締役1人を送り込む。NIOは「両社はNIOの海外における事業機会を共同で追求することで合意した」と述べている。

今回の大規模な投資は、中国の自動車産業とEVメーカーの勢いを象徴している。中国は既に世界最大の自動車市場だが、今年は自動車輸出台数でも世界1位となった。NIOは、2023年第1四半期に前年同期比20.5%増となる3万1041台を出荷した。

CYVNのJassem Al Zaabi会長は「今回の投資の決め手となったのは、NIOが持つトップクラスのブランド力と革新的でプレミアムな製品、スマートEV市場で実証済みの高い技術力だ。われわれは、NIOの海外事業を成長させる戦略的価値を提供することに全力を尽くす」と述べた。

NIOのウィリアム・リー(李斌)会長は、「CYVNからの出資は当社のバランスシートを強化し、長期的な競争力の構築に役立つ」と述べている。リーは2014年にNIOを設立し、資産額はフォーブスのリアルタイム長者番付で14億ドルと推定されている。同社は2018年、ニューヨーク証券取引所に上場した。
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編集=上田裕資

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