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2023.07.06 12:30

「事件はレストランで起きる」 夫は名物校長で著名フーディー|イノベーターの妻たち

書籍の「余白」が重要なビジネスノート

──青田校長は高校の卒業式で、サプライズで「ガシャポン」機を設けて卒業生に歓声を上げさせた(ガシャポン 都内進学校に100台のガシャポン機! バンダイと仕掛けた「卒おめ大作戦」 )り、校内に設置したセブン=イレブン自販機の電力を校内の小さなソーラーパネルで発電するなど、新規軸をバズーカ砲のごとく次々に打ち出されて、まさにメディアからひっぱりだこです。「メンズビオレ自販機」導入で都内進学校が目指すこと。男子長髪も?では、子どもたちにこれからのトレンドを先取りして提示してあげたい、というようなことをおっしゃっていました。トレンド情報や新企画はどのように取り入れられているのでしょう?

はい、食を通しての会合で各界のリーダーの方々とお話をする機会が本当に多いので、やはりそこから吸収しているんだと思います。

一流の方はご自分の失敗も含めてシェアされるし、他業界のイノベーターの方々の試行錯誤から学ぶことは本当に多いのではないかと思います。そうやって、教育業界「外」の人と絡んだり、他業界発の発想から刺激を受けたりするのが好きなんでしょうね。なんといっても「教育業界初」の企画だと、失敗しても初めてだし、他校と比べて落ち込むこともないし、チャレンジがしやすいようです。

あとは、とにかく読書家で、書籍から情報、知識、考え方のベースを取り入れているようです。驚くのは、彼が読んでいる本を見ると、余白に「青稜にステージを移し変えたらどういうように応用できるか」が具体的に書き込まれているんです。「読んで終わり」にしていないことが視認できますね。

余白に「青稜にはどう応用できるか」のアイディアが書き込まれた愛読書、『ビジョンとともに働くということ 「こうありたい」が人と自分を動かす』(山口 周・中川 淳著、祥伝社刊)

余白に「青稜にはどう応用できるか」のアイディアが書き込まれた愛読書、『ビジョンとともに働くということ 「こうありたい」が人と自分を動かす』(山口 周・中川 淳著、祥伝社刊)

ビジネスは副次的、そして食の場では「素」が出やすい

──青田校長の一番の強みは? と問われたら?

1番の強みはやっぱりコミュニケーション能力ですね。場の空気を読むのがすごくうまい。食事会の席でも、この人にはここから踏み入ってはいけない、ここまでは言っても大丈夫、を直感的に塩梅する達人ですね。

たとえば、「いじった」方が仲良くなれる人と、いじると気まずくなる人を見極める。人との距離感をつかむことにかけてはまるで仙人です(笑)。

学校にもいろんなタイプの子供たちがいるはずですが、よく観察して、距離の取り方を考えているんじゃないかと思います(編集部注:「生徒たちに人気がある校長」青田氏にもメディアはたびたび注目している)。

彼はたしかに本当に食が好きで、おいしいレストランを求めて勉強するし、情報も集めている。そしてそういう一流の場所には、感度の高い経営者も集まってきて化学反応が生まれます。時にはレストランが、ワインや料理が並んだ企画会議室みたいになっても不思議ではありませんよね。

でも彼は、そういう、ビジネスの文脈での「発火」はあくまでも副次的なものと思っているようです。レストランが、『踊る大捜査線』でいう「現場」になることがあっても、事件は計画した通りには起きませんから。

当然、「自分のビジネスにこの人物は使える、次の規軸のキーパーソンになり得る」と判断して彼にアプローチしてくる人はいます。でも、そういう人たちとのお付き合いは、彼にとって決してサステナブルではないんです。

まず、すぐわかるのは、彼らは、夫婦で一緒に座っているのに夫の方だけ見て話す。私にはもう、目もくれない。夫にしか用事はない、と思っているのが伝わりますね。食の現場ではいい意味の本音も、あまりよくない「素」も出やすくなるのかもしれません。

そういうときは私はもうむちゃくれて、食事とワインに集中します(笑)。彼の方も、そういう方とのご縁がビジネスに発展することはあまりないないようです。

取材・文=石井節子 写真=曽川拓哉

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