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2023.06.29 13:30

美しい離島への移住者に補助金1300万円 アイルランド

アイルランドのイニシュモア島(Getty Images)

アイルランドのイニシュモア島(Getty Images)

仕事を辞め、あくせくした競争社会に別れを告げて、離島で暮らすことを夢見たことがある人は、その夢がもうすぐかなうかもしれない。アイルランド政府が、国内の離島30島のいずれかに移住する人に最高8万4000ユーロ(約1320万円)の補助金を支給すると発表したのだ。

これは、人口の少ない沖合の離島の活性化を目指すアイルランド政府の先見的なプロジェクト「Our Living Islands」の取り組みの一つだ。対象となる島にはたとえば、大西洋に沿って雄大な景勝道路ワイルド・アトランティック・ウェイが走るドニゴール県の沖合にあり、そそり立つ高さ約46メートルのごつごつした断崖が目を引くアランモア島がある。メイヨー県の沖には、砂浜とハイキングコースが有名なクレア島がある。ベア島は、ウォーキング、サイクリング、バードウォッチング、植物観察が楽しめる静かな楽園だ。アラン諸島のイニシュモア島では、2022年アカデミー賞にノミネートされた映画『イニシェリン島の精霊』のロケが行われた。

夢のような話に聞こえるだろうか。ただし、外界から隔絶された島ばかりだ。本土に渡る橋はなく、潮の満ち干によって完全に孤立する島もある。それに、ほとんどの島はとても小さい。クレア島の人口はわずか160人だ。

アイルランド政府の10カ年戦略では、世代を超えて繁栄する地域社会をつくり、各島の経済を多様化し、リモートワーカーにとって魅力的な環境を整備し、住民にキャリア形成の機会を創出することを目指している。そして、これまでの生活とは全く異なる離島暮らしを受け入れる勇気のある人々に、政府は喜んで補助金を支払う方針だ。

同様の計画は、他の国でも行われてきた。たとえばイタリアでは、移住者に3万3000ドル(約470万円)相当を支給すると発表したカラブリア州や、最大5万2500ドル(約750万円)相当の補助金を提示しているサント・ステファノ・ディ・セッサニオ村など、各地の自治体が同様の提案をしている。米国でも移住者に自治体から補助金が出るプログラムが各地で実施されている。

だが、8万ユーロもの補助金を出すアイルランドのプログラムは、そうした中でも特に太っ腹だ。

ただし、このような制度には付きものだが、利用には条件が設けられている。補助金の目的は、廃墟と化した不動産を再生して島の景観を彩ることだ。移住希望者は、1993年以前に建築され、少なくとも2年間は空き家となっている島内の不動産を購入しなければならない。支給される補助金は、改築や改修など建築工事にのみ使用できる。

また注意点として、アイルランドでは誰でも不動産を購入できるが、それだけでは在留資格は保証されない。(二重国籍の人や、市民権や就労ビザを取得した人は別だ)

応募開始は7月1日だ。打ち寄せる波のシンフォニーで目覚め、息をのむような美しい自然に囲まれながら結束の強い地域社会に暮らすというアイデアに魅力を感じるなら、ぜひカレンダーに印を付けておこう。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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