墜落現場をとらえた写真や映像から、撃墜されたクートはIl-22M11-RT型だったようだ。同機の主な役割は遠く離れたロシア軍の部隊間の無線中継だ。
イリューシン航空機と、数の少ないジェット機のベリエフA-50早期警戒管制機は、ウクライナでの戦争で重要な役割を果たしてきた。
ロシアの軍事ルールでは、局地的な作戦計画ですら上級指揮官が承認する必要がある。同様に、ロシアの戦闘機のパイロットは、ウクライナの防空活動の情報を伝えるために地上のレーダーオペレーターに大きく依存している。
戦闘機と地上側どちらもしっかり機能する長距離通信を必要とする。2人の無線オペレーターが連絡を取り合うには離れすぎている場合、Il-22Mの乗員が仲介役となり、見えないところで信号を受信して中継することができる。
長距離無線中継はロシア軍の作戦の中核をなすもので、中継が途絶えれば前線の作戦に支障をきたす。例を挙げると、ウクライナ北部の前線をパトロールするロシア軍の戦闘機中隊は、ウクライナ軍戦闘機の接近を早期に把握するのにベラルーシに設置された長距離レーダーPodlet-K1に頼っている。
このシステムは常に機能していたわけではないと英王立防衛安全保障研究所の報告書には書かれている。特にウクライナでの戦争の初期にはそうだった。
「戦争が始まって最初の週に、Podlet-K1システムがカバーする地域でウクライナ軍の低空飛行の戦闘機がさまざまな機会にロシア軍の高高度哨戒機を待ち伏せすることに成功したのは、地上ネットワークからの情報を哨戒中の戦闘機に伝達するIl-20Mクート空中司令・無線中継機へのレーダーから偵察情報の伝達が不十分だったことを示していている」と報告書は指摘している。
無線中継の途絶がいかにロシア軍を弱体化させるかを自分たちの目で確かめたウクライナ軍は、ロシア軍のIL-22MとA-50を排除することを優先した。
戦争の初期に1機のIl-22Mにウクライナ軍のミサイルが撃ち込まれたが、なんとか無事に着陸したと報じられた。また、ウクライナ軍のドローン部隊は2月に、ベラルーシの基地にいた少なくとも1機のA-50に爆発物を積んだドローンを着陸させ、機体を軽く損傷させた。
だがロシアは、ワグネルが反乱を起こしてロストフナドヌーからモスクワに向かう道すがら視界に入るすべてのヘリや航空機を砲撃し始めるまで、貴重な中継機を1機も完全に失ってはいなかった。
(forbes.com 原文)