プリゴジン氏が率いたワグネルの部隊は一時、首都モスクワに迫り、ロシア軍との内戦状態に陥る危険性が指摘された。プリゴジン氏は「兵士2万5000人全員が死ぬ準備ができている」と語っていたが、24日夜に「ロシア人の血が流れることに対する責任を自覚し、部隊を方向転換させている」とSNSに投稿し、「プリゴジンの乱」は終わった。
元自衛隊幹部はまず、今回のワグネルの軍事行動について「モスクワへの進撃を本気で考えていたとは到底思えない」と語る。「自衛隊では2個師団規模だ。どの程度の部隊が移動したのかわからないが、燃料や武器、食糧などの補給を続けるのは簡単ではない。対決するというロシア軍は弱いと言っても、数十万人規模だ。実際に戦闘する考えではなかったのではないか」と語る。「プリコジンは、俺を粗略に扱うと大変なことになるぞとプーチン(ロシア大統領)に示すため、その交渉材料としてワグネルを動かしたのではないか」
確かに、ウクライナ東北部・バフムートの争奪戦を巡り、ワグネルは苦戦。プリゴジン氏は随分前から、プーチン氏の悪口は言わないものの、ゲラシモフ参謀総長やショイグ国防相ら、ロシア軍幹部を猛烈に非難していた。別の元幹部も「ロシア軍は、7月1日までに全ての義勇兵に軍と契約するよう命じていた。プリコジンは、このままではじり貧になると思って、プーチン大統領と取引をする賭けに出たのではないか」と話す。
プーチン大統領は当初、ワグネルの行動を「裏切り」と非難し、処罰する考えを示していたが、反乱の終わりを受けて、一時、処罰しない考えを示すなど、対応が揺れた。元幹部の1人は「プリゴジンは、ウクライナ情勢をにらみながら、プーチンがワグネルとの全面戦闘を指示しないと読んでいたのではないか。何らの取引がプーチンとプリコジンの間で行われた可能性がある」と話す。