しかし、LVMHがターゲットにしているのは、若い顧客だけではない。LVMHのようなファッション企業は、デジタルツールを活用して美術品の購入を検討する富裕なアートコレクターの存在をヒントに、そのような富裕層の顧客にも、Web3を通じて訴求したいと考えている。
LVMHは、新たなテクノロジーに継続的に投資しており、2017年から毎年同社が開催しているプログラム「LVMHイノベーションアワード」を通じて発掘した新たなスタートアップをたびたび起用している。
そして、2016年から毎年パリで開催されている欧州最大級のスタートアップ・イベント「Viva Technology」でも、LVMHパビリオンにおいて、毎年そのイノベーションを展示している。LVMHのアルノー会長兼CEOは今年のアワードで「LVMHも、少し前まではスタートアップだった」と述べている。エピックゲームズとの提携も、今年の「Viva Technology」で発表が行われた。
エピックゲームズは、米国のゲームおよびソフトウェア開発企業だ。1991年にティム・スウィーニーによってPotomac Computer System(ポトマック・コンピュータ・システム)として設立され、現在はノースカロライナ州ケーリーに本社を置く。
『フォートナイト』『Battle Breakers』『FallGuys』といった人気タイトルを手がけている。
エピックゲームズのソリューションのいくつかはすでにLVMHに取り入れられており、2022年の「Viva Technology」ではブルガリが、エピックゲームズのUnreal Engineを使って、古代ローマに着想を得たメタバース体験「Virtual Rome」を発表した。また、Unreal Engineとデジタルヒューマンを作成するためのフレームワーク「MetaHuman」によって生み出されたバーチャルアンバサダー「Livi」も発表していた。ルイ・ヴィトンは2023年、Unreal EngineやMetaHumanなどを活用した「デジタル・ショー・エクスペリエンス」を発表予定だ。
ベルナール・アルノーが、1987年からの36年間で買収してきた企業の数は驚異的だ。以下のブランドリストをまとめながら、世界のファッションリーダーになるというアルノーのビジョンに畏敬の念を覚えた。パリ五輪が開催される2024年は、LVMHにとってとりわけすばらしい年になるはずだ。