皮膚に温かい刺激と冷たい刺激を同時に与えると、ほんとうはそれほど熱くないのに熱く感じたり、痛みを感じたりすることがあります。これは「サーマルグリル錯覚」と呼ばれる錯触現象です。これを利用すれば、爪で引っ掻いて皮膚を傷付けることなく、かゆみを抑えることができます。こうした研究成果を役立てたいと5人の大学教員が起業した大阪ヒートクールは、サーマルグリル錯覚を与えるデバイスを2年間かけて開発し、特許を取得。「ThermoScratch」(サーモスクラッチ)として製品化に成功しました。
皮膚のかゆみは脊髄神経を通って脳に送られますが、このかゆみ伝達神経は、皮膚を掻きむしることで活動が高まります。また、かゆいところを何度も掻くとNPTX2というタンパク質が増えて、それがさらにかゆみ伝達神経の活動を高めます。そうして掻けば掻くほどかゆくなる「かゆみの悪循環」が起こります。
皮膚を掻きさえしなければ、かゆみの悪循環は起こりません。ThermoScratchは、複数のペルチェ素子をパルス幅変調で制御して温冷効果を生み出して、サーマルグリル錯覚によってかゆみを和らげます。実際に皮膚に伝える温度は摂氏40度と15度程度なので安全です。爪で掻いたときのように皮膚を傷付けることもなく、塗り薬と違って効くまでのタイムラグがない即効性も特徴のひとつです。これまでに実施された無償トライアルでは高い評価を得ているとのこと。
ThermoScratchは現在、Kickstarterのクラウドファンディングで限定先行発売中です。調達した資金は、量産体制の構築とさらなる研究開発に役立てられる予定です。このクラウドファンディングはAll or Nothingなので、目標が達成された場合のみ、支援者に量産初期ロットの製品が送られます。
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