DXは単なるデジタル化ではなく、根本的な仕組みの変革
神野理事長はDXと、デジタル技術を用いてサービスなどの付加価値を高めるデジタライゼーション(Digitalization)とは、大きく意味が異なると強調する。DXはトランスフォーメーションなので、根本的な仕組みの変革が伴うという。神野理事長は、恵寿総合病院を運営する社会医療法人董仙会のスローガンに「人を責めるな、しくみを責めろ」と掲げている。DXをばねに、病院で当たり前だったすべてのことを見直して、適切な医療を提供できる仕組みを構築したいとの思いを持っている。この国は今後、団塊世代のすべてが75歳以上の後期高齢者となる2025年問題、医療・介護需要がピークを迎える2040年問題など、難題が続く。病院が提供する医療は現在、「入院」と「外来」に大きく分けられるが、神野理事長は、近い将来、「入院」と「在宅」になると予想している。後期高齢者も、さらに年を重ねて病院にも来ることができない状況になるというのだ。
神野理事長は、「これから特に地方では患者が減り、同時に医療を提供する医療者も不足していく。持続的に地域で医療を提供していくには病院DXは必須になる」と話す。
董仙会と関連の社会福祉法人徳充会は、「けいじゅヘルスケアシステム」という統合呼称を使い、能登半島から金沢市に展開する両法人の医療介護福祉情報をシームレスにまとめる電子カルテシステムの運用を2002年に開始している。
在宅医療の需要増加や、介護が必要な人が増えることを見据えて、救急医療を提供する恵寿総合病院の中に、2022年9月に介護部、今年6月には地域包括ケアステーションをそれぞれ立ち上げた。これまでも訪問診療・看護・介護・リハビリテーションなどで在宅医療に取り組んできたが、機能を集約して効率的にサービスを提供できる準備を進めている。近い将来を先取り、先手を取っていく構えだ。
石川県七尾で、この国の医療を見据えて加速度的に病院DXを進める恵寿総合病院から目が離せない。
神野正博 理事長
1980年日本医科大卒業。金沢大学第二外科入局、
1986年金沢大大学院を修了(医学博士)。浅ノ川総合病院を経て、金沢大学第二外科助手。
1992年恵寿総合病院外科部長。翌1993年院長
1995年医療法人菫仙会理事長に就任
神野正隆 理事長補佐
2006年福井大卒業。2008年金沢大消化器内科(旧第一内科)入局。
2020年4月 恵寿総合病院に入職し理事長補佐に就任。
2021年金沢大学院を修了(医学博士)
2023年国際医療福祉大学院を修了(MBA)
恵寿総合病院消化器内科科長、
内視鏡センター長、薬剤管理センター長、入退院管理センター長、データセンター長を兼務。