「当社の最終的な目標は、エヌビディア(NVIDIA)のような企業になることだ」と、医師から起業家に転身した35歳のチョンは、フォーブスのビデオインタビューで語った。
コーティカル社は4月に、香港のビリオネアの李嘉誠の投資会社ホライゾン・ベンチャーズが主導した資金調達ラウンドで1000万ドル(約14億円)を調達した。このラウンドには、米中央情報局(CIA)のベンチャーキャピタル部門のIn-Q-Telなどの既存投資家も参加した。
新たな資金を得た同社は、今年末までにバイオコンピュータを発売し、収益を上げようとしている。コーティカル社はすでに、ケンブリッジ大学のスピンオフ企業で研究用のヒト細胞を提供しているビット・バイオ社と提携し、製品の実験を行っているとチョンは述べている。
同社はまた、2024年末までにクラウドサービスの提供を開始し、企業がさまざまなタスクのために脳細胞をプログラムできる120台のバイオコンピュータを用意する予定で、米国のクラウドプロバイダー数社と交渉中という。
しかし、チョンの計画が非常に高いハードルに直面していることも事実だ。科学者たちは過去20年間、生きた細胞とシリコンの融合を試みており、医療やその他の分野で利用可能な、人間の脳のように働くAIシステムを構築しようとしている。しかし、従来のコンピュータに匹敵するようなバイオコンピュータの開発に成功した者は、今のところ誰もいない。
実験室で培養された脳のパイオニアである、ケンブリッジ大学の分子生物学研究所のマデリン・ランカスターは「コーティカル社は、具体的にどのようにしてこの分野の障壁を乗り越えるのかが不明だ」と述べている。
また、技術的なハードルとは別に、同社は倫理的な問題にも直面している。実験室で培養された脳細胞が意識を持つようになり、痛みや喜びを感じるようになるかもしれないといった懸念だ。チョンは、生命倫理学者らと緊密に連携し、そのような懸念について社会との対話を続けていくと述べている。