もちろん、欧州の買い手はロシアのガス大手ガスプロムから値引きを提示されるまでは、天然ガス輸出の再開に抵抗するかもしれない。ガスパイプラインでは輸出市場が決まっているため、今後数年間、ガス輸出の増加分は西欧に向けられる。その結果、石炭の使用減やインフレ率の低下、さらには石油消費のわずかな減少など、さまざまな面で欧州にとってプラスになるだろう。
石油の場合、ウクライナでの戦争で恒久的な決着がつくまでの間、トレーダーが買い占めて西欧で転売することで、知られたくない事実が覆い隠されていることから、アジアの一部の国が享受してきた割引は減少する可能性が高い。中国とインドは価格上昇の影響を受けるだろうが、石油市場は一般的にバランスがとれた状態になる。そして、ロシアから石油を買う国々への制裁の代替となる動きによって、タンカーの運賃と消費者に回ってくるコストは下がるだろう。だが、そうした効果は控えめなものになりそうだ。
プーチンは経済開発計画を実行するために、現状よりも石油輸出を増やそうとするだろうか。おそらくそうするだろう。だが、市場への影響は数年間は現れないだろう。短期的には、価格が上昇すれば、プーチンは喜んで割当量を守るようになるかもしれないが、その代わり市場への供給過多を回避しようとするサウジアラビアの要求に対してより激しく抵抗するようになるかもしれない。
私の推測では、短期的(3~6カ月)にロシアは輸出を若干抑制するだろうが、長期的には、原油価格に下限をつけようとする石油輸出国機構(OPEC)プラスの取り組みを脅かす存在になる可能性がある。
ロシアは「謎に包まれた、謎の中の謎」という元英首相チャーチルの言葉はよく引用される。だが、多くの人は、その謎を解く鍵は「ロシアの国益」だとチャーチルが付け加えたことを忘れている。問題は、プーチンがロシアの国益は多かれ少なかれOPECプラスとの協力を意味すると考えているかどうかだ。
(forbes.com 原文)