地球を守るための新たな境界線
ECの共同議長である、中国科学院の学術委員会ディレクターの秦大河教授は、「新たな環境基準の構築を目指す地球委員会の活動は、地球の気温上昇を抑えるために設定された目標をはるかに超えている」と語ります。「気候変動と闘うために、各国は地球温暖化を2度以下に抑えることに合意しています。しかし、他の重要な環境要素については、それに匹敵する目標がありません。地球委員会は、この重要なギャップを埋めるものです」
最大のリスク領域にアプローチを集中させるため、ECはその活動を5つのワーキンググループに分けています。
1. 地球・人間システムモデリング
人類や地球上の生物にとって、安全で安定した地球環境を目指すため、海洋、生物圏システム、地球大気と人間の直接的な相互作用をマッピングします。2. 生物圏相互作用
このグループの科学者は、地球を安全で適正なパラメータ内に保つために必要な生態系の規模と完全性を探求します。これらのパラメータは、明確な目標を策定するための指針となります。3. 栄養素と汚染
窒素、リン、炭素などの栄養素の変化が、水系の汚染などによって、地球の安定性や回復力をどのように損なうかを分析します。4. トランスフォーメーション
このグループの専門家は、地球の自然システムに変化をもたらす社会的・経済的要因に焦点をあて、地球を守るために必要な変革を実現するために必要なガバナンスについて研究します。5. 変換と手法
このグループは、ECの勧告を実践に移す役割を果たします。様々な評価を科学的根拠に基づいた目標に変換し、政府、企業、市当局が地球にプラスになる行動を実施できるように支援します。地球の生命維持
地球規模で緊急かつ体系的なアクションがとられなければ、私たちの地球とその生命維持能力に対する脅威は指数関数的に増大します。グローバルリスク報告書2023年版は、行動を起こす緊急性と、行動を起こさなかった場合の結果を示しています。報告書は、「大幅な政策変更または投資がなければ、気候変動の影響、生物多様性の喪失、食料安全保障、天然資源消費が相互作用し、生態系の崩壊が加速するとともに気候変動に弱い経済圏の食料供給と生活が脅かされます。そのことが、自然災害の影響をさらに増幅し、気候緩和に関する進展を制限することになるのです」と、警告しています。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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