また、世界経済フォーラムのネイチャー・アンド・クライメート・センター長であるギム・フアイ・ネオは、次のように述べています。
「科学は、ビジネスにとって決定的な重要要素です。なぜなら、科学が、気候を自然、淡水、きれいな空気、その他のグローバル・コモンズと結びつけ、私たちの共通の未来を確保するために何が必要かを定義しているからです。そして、現在の軌道が世界経済と社会にとっていかに耐え難いものであるかを、科学は明らかにしています」
「企業は、事業やサプライチェーンにおいて、相互に影響し合う危機や深刻化するリスクに直面し、価値を破壊することになるでしょう。この新たな研究は、企業がどのように戦略を立て、目標を設定し、リスクを軽減するための行動を実行するのか、そして、いかにしてリーダーシップを発揮し、成功し続けるための条件を守ることができるかについて、科学的な裏付けとなるでしょう」
高まるグローバルリスク
気候変動、生物多様性の喪失、海洋環境の悪化がもたらす脅威については、世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書2023年版で警笛が鳴らされています。今後10年間の世界の安定を脅かす最も深刻なリスクの指標は、環境的な要因に支配されているのです。
環境リスクは、世界の主要なリスクの大半を占めています。
環境リスクは全部で6つあり、報告書が示している上位4つのリスクは気候に関連するものです。気候変動の緩和策の失敗、自然災害や異常気象、生態系全体の崩壊につながる生物多様性の喪失などが含まれます。
新しい境界線を設定する緊急の必要性は、人間の活動が脆弱な地球惑星システムに与える影響を反映しています。生物多様性の喪失を例にとれば、「生きている地球レポート2020 (Living Planet Report 2020)」のデータを見ると、生態系が急速に衰退していることは明らかです。
世界のあらゆる地域で生物多様性が激減しています。
上の図が示すように、自然や野生生物が劇的に失われていっていることは、世界のあらゆる地域で記録されています。ヨーロッパでは、全生物多様性の4分の1が失われており、ラテンアメリカとカリブ海諸国では、爬虫類や魚類が失われたことにより、1970年以降、生物多様性が94%も減少しています。