オーストラリアでオンラインの安全の監視を担当する機関「イーセーフティー・コミッショナー」の発表によると、ソーシャルメディアをめぐって過去1年に寄せられた苦情では、ツイッターに関するものが最も多くを占めた。マスクが2022年10月にツイッターを買収して最高経営責任者(CEO)に就いて以降、数が増えたという。マスクは買収後、およそ6万2000件にのぼるアカウントの凍結を解除している。
イーセーフティー・コミッショナーのジュリー・インマン・グラント長官は「ツイッターはヘイト対策を怠っているように見受けられる。わたしたちのもとに報告されているオンラインヘイトのうち、いまでは3分の1がツイッターで起きているものだ」と説明した。「凍結されていたアカウントの一部が復活したことで、オーストラリア国内外のネオナチを含め、極端に偏った考えの人や暴言や憎悪をまき散らす人を増長させているという報告にも留意している」と言及した。
イーセーフティー・コミッショナーは、ツイッターではマスクが従業員を約8割削減し、信頼・安全チームのメンバーも減らしたあとに、ヘイトスピーチが増えたと指摘している。
ツイッター側がどのようなヘイト対策をとっているかについて28日以内に回答しない場合、違反状態が続く間、1日に最大約70万豪ドルの罰金を科される可能性があるとしている。
「言論の自由」の下で増えるヘイト
マスクはツイッターを440億ドル(現在の為替レートで約6兆2500億円)で買収して以降「言論の自由」を優先させる姿勢を貫いてきたが、こうした姿勢はヘイトスピーチの目立った増加も招いている。ブルッキングス研究所によると、ツイッターではマスクによる買収完了から12時間後「Nワード」と呼ばれる黒人に対する差別的な表現の使用が500%も増加。ユダヤ人に対する差別的な表現にあたる「Jew」を含むツイートも1週間で5倍に増えた。
南カリフォルニア大学が4月に発表した研究によると、もともとヘイト表現の多かったツイッターユーザーが、マスクによる買収後、ヘイト表現をますます多くするようになっていることや、プラットフォーム全体でもヘイトが増えていることもわかっている。
こうした状況は広告主のツイッター離れにつながっている。CNNの報道によると、コンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視や削除)担当者の削減や一連のポリシー変更などを理由に、1月時点でツイッターの以前の大口広告主の半分超が出稿を取りやめている。
イーセーフティー・コミッショナーは2月にも、ツイッターやTikTok、YouTubeなどに対して「児童の性的搾取・虐待、性的強要、有害コンテンツのプロモーション」にアルゴリズムがどう対処しているか質問していた。これについては回答を得て評価を進めており、今後発表するとしている。
(forbes.com 原文)