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2023.07.03 11:00

HR Tech企業の力を結集し日本の採用を変革 Thinkingsが目指すHRのプラットフォーム

採用環境の変化やそれに伴う働き手の意識改革により、企業のHR領域における課題は複雑化している。求める人材を獲得するために、企業や採用担当者が注力すべきことは何か?2012年からSaaS型のソフトウェアで企業の採用活動をサポートしてきたThinkingsに、そのポイントを聞いた。

今も昔も、人材は企業経営の要。とりわけ、今後は少子化に伴う学生数の急減が予想され、採用環境が厳しさを増すなかで、企業の獲得戦略の重要性もより高まっていくだろう。少なくとも、新卒一括採用という旧来の仕組みが制度疲労を起こしていくのは明らか。すでにその兆候は見え始めており、従来通りのプロセスで求める人材が簡単に集まる時代ではなくなっている。

瀧澤暁(Thinkings代表取締役会長)はそうした採用領域における積年の課題に向き合い、ソフトウェアによって解決をはかるべく尽力してきた。

採用担当者が本当に注力すべきこととは?

瀧澤は2012年、企業が求める人材を迎え、よりよい組織をつくっていくための採用管理システム「sonar ATS」を開発。その後10年にわたりプロダクトを磨き上げながら、約1500社の採用活動を支援してきた。

「大きな企業であればあるほど、採用計画における業務量は膨大になります。いわゆる銀の弾丸などはなく、一つひとつの細かな手順を積み上げてクロージングに至るしかありません。しかし、採用担当者のリソースが限られるなか、それを着実に行うことは困難です。そこで開発したのが、採用のオペレーション業務のほぼ全てをサポートする『sonar ATS』です」

 sonar ATSの根幹となる設計思想は「Flexibility(柔軟性)」と「Productivity(生産性)」だ。柔軟性に関しては瀧澤が「できないことは何もない」と言うほど、企業ごとに異なるさまざまな採用プロセスに対応できる。生産性については、煩雑かつ膨大な採用業務の多くを設定一つでオートメーション化。これにより、担当者は本来やるべき業務の手数を増やすことができる。

「では、採用担当者が本当に注力すべき業務とは何か。私は二つあると思います。一つは、本気で会社を代表して求職者に向き合い、口説きにいくこと。相手が入社したいと思うに足る情報を、情熱を持って伝えていくことです。

もう一つは、リソースアロケーションの最適化です。たとえば、どうしても獲得したい人材に優秀な面接官をいかに割り当てるか。その配分は採用の成否を分ける大きなポイントになりますが、他の業務に追われて管理がおろそかになり、面接官という武器を適切に使いきれていないケースも少なくありません。

担当者にはこの2つの業務に専念してもらい、他はシステムに丸投げする。意志ある採用担当者の『理想』を実現するために、sonar ATSを役立てていただきたいと考えています」

HRのあらゆる課題を解決するプラットフォーマーへ

sonar ATSの開発から10年が過ぎ、採用を取り巻く環境はさらに大きく変化した。特に、昨今の採用市場は慢性的な人材不足から「超売り手市場」といわれ、多くの企業が採用難に直面している。そうした難題を、一つのプロダクトだけで解決に導くことは難しい。

そこでThinkingsが目指すのは「HR Techのプラットフォーマー」だ。自社だけでなくHR領域に関わるさまざまな企業と連携することで、採用にまつわる全ての課題に向き合おうとしている。

「sonar ATSは採用のワークフローを自動化することはできても、人を集める機能はありません。そこはThinkingsが自前で開発するというより、外部企業のサービスをうまく連携させていきたいと考えています。やはり、餅は餅屋。私たちは私たちでワークフローの管理システムをさらに磨き込み、それ以外については外部のプロフェッショナルとアライアンスを結んで、sonar ATSの導入企業もそのサービスを使えるようにする。そんなプラットフォームをつくりあげ、採用の課題を『みんなで解決』していくことを目指しています」

2022年には、HRサービスのマーケットプレイス「sonar store」を開始。sonar ATSと連携している45以上のHRツールの導入を支援するなど、プラットフォーム化へ向け歩み始めている。

「ソフトウェアの世界でもオープンソースが当たり前になったように、いち企業だけで大きな課題を解決する時代ではありません。採用だけでなく日本の人事領域全般を根本から変えるために、同じ志を持つ仲間を集めていきたいですね」

目指すは国内有数のSaaS企業

こうした構想を実現するためには、自社サービスであるsonar ATSの立ち位置も重要だ。現在の導入実績はおよそ1500社だが、その数やシェアをさらに高めていく必要があると瀧澤は考えている。

「いくらプラットフォームを目指すといっても、肝心の僕たちのサービスが持続的に成長していなければ説得力はありません。まずはsonar ATS自体を国内トップクラスの採用ワークフロー支援ツールにしていくこと。そのうえで、私たちと組みたいと思っていただける企業を増やしていくことが大事だと考えています」

シェアをさらに拡大するためには、採用マーケットの変化に合わせてサービスを適時ブラッシュアップしていく必要がある。その点でも、いわゆるSaaS型のビジネスモデルであるsonar ATSには、大きな優位性があるといえるだろう。

「今でこそSaaSは当たり前になりましたが、私たちがsonar ATSを開発した2012年時点では一般的ではありませんでした。そこであえてSaaS型を選んだのは、ソフトウェアのデリバリーの方法として非常に優れていると感じたからです。従来のソフトウェアに比べて導入コストがかからず、その後も継続して改善を受けられる。とても合理的ですし、この方式ならマーケットの変化にいかようにも対応できるだろうと」

実際、sonar ATSもこの10年間、さまざまな改善を重ねながらサービスを大きくアップデートしてきたという。

「sonar ATSは業界、業種に特化せずに全ての業種の企業に同じサービスを提供できる、いわゆる『ホリゾンタルSaaS』ですが、その使い方やサービスに求めるものは企業によって異なります。当然、採用に関して高度なチャレンジをしようとする会社ほど、サービスに対する要求も高くなる。私たちはそうした企業の声をすくいあげ、課題を特定し、機能に落とし込んで再度デリバリーすることを繰り返してきました。10年間の蓄積を経て、その企業だけでなく、sonar ATSを導入している全ての企業が機能改善の恩恵を受けられる。つまり、サービスを使うお客様全体の採用力向上につなげることができるわけです。これが、SaaS最大のメリットであると考えています」



一方で、SaaSのビジネスモデル自体を「流行り物」として捉える向きもある。実際、一時期はある種のムーブメントのようになり、有象無象のサービスが乱立したこともあった。しかし瀧澤は10年前と変わらず、その価値と可能性を信じ続けている。

「確かに、今はSaaS冬の時代などと言われることもあります。ファイナンスの面では逆風が吹いていて、資金調達の環境が悪くなったことも事実です。こうなった原因は、あまりにも急激にサービスが増えすぎたこと。なかには『一見それっぽいけど、全くSaaSではない』ものも数多く見受けられました。ただ、現在はいったん、そうしたものが淘汰されつつあると感じます。つまり、本来のSaaSの合理性を実現し、価値あるソフトウェアを提供している会社だけが残ってきている。そうしたSaaS企業であればお客様からもマーケットからも、再び高い評価をいただけるのではないでしょうか」

瀧澤は「遅かれ早かれ、全てのソフトウェアはSaaSになると思う」と語る。そして、その必然の流れに乗って良いサービスを提供し続けた先に、こんな展望を描いている。「目指すのは国内有数のSaaSカンパニーです。当面の具体的な目標として掲げているのは、ARR(年次経営収益)100億円。 国内でそこまでの数字を挙げられる企業は数社しかありませんが、我々なら必ず実現できると確信しています」。規模が広がれば当然、社会に与える影響力や果たすべき責任も相応のものになるが、瀧澤の声にはむしろ力が込もる。「日本企業の採用力を底上げし、より創造的に働ける社会をつくっていく存在になれたらと思っています」。

人的資本の重要性が高まる中、流行り物としてではなく、SaaS本来の合理性と価値を実装し続けてきたThinkingsが、業界を巻き込んで作り上げるHRのプラットフォームでは、どんな未来が創造されるのか。期待がかかる。

Thinkings
https://thinkings.co.jp


瀧澤暁(たきざわ・さとる)◎Thinkings代表取締役会長。駒澤大学法学部を卒業後、採用支援サービスを提供するスタートアップ企業を経て、2000年に株式会社インフォデックスを創業。広告配信システムの企画開発からアドネットワークの運営、広告クリエイティブまでワンストップで行うアドテク&クリエイティブ事業を展開。2012年、HR Tech事業を立ち上げ、sonar ATSのサービス提供をスタート。プロダクトマネージャーとしてサービスの企画開発を担当。2020年、経営統合によりThinkings株式会社を設立、代表取締役会長に就任。

Promoted by Thinkings / text & edit by Noriyuki Enami / photographs by Kenta Yoshizawa