「何の職業につくかよりも、どんな自分でありたいかが大事」──。よりよき未来をつくるための本来の「学び」とは。投資家の藤野英人、起業家のリ・レウォン、教育者の工藤勇一。3人が日本の未来への最大の投資、教育について語る。
先行きが不透明な時代、私たちは次世代に「お金」や「仕事」についてどのように伝えていけばよいのか。そう考えたとき目下、日本の社会の課題は、時代遅れの枠にはめられた「学び」にある。
今年2月、『投資家がパパとママに伝えたいたいせつなお金のはなし』を上梓したレオス・キャピタルワークス会長兼社長の藤野英人、小学生のときに「楽しい学び」を追求して自ら考案した学びメソッドで起業したリ・レウォン、実際の教育現場で大胆な改革を推進する横浜創英中学・高等学校校長の工藤勇一に、その課題と実践について語ってもらう。
藤野英人(以下、藤野):まずは、投資家の僕が教育にかかわる理由から。実は、広義の投資のなかでいちばんパフォーマンスを発揮するのは、自己投資と教育投資です。ふたつは表裏一体。自己投資は自分が学び、学びやすい環境をつくること、教育投資は社員や世の中の人がより学びやすい機会を提供すること。投資家として社会にリターンを出そうとするなら、教育投資に力を入れるのは、最も重要な仕事のひとつなんです。
教育の成果は、社会にどんな大人が生まれたかで測れると思います。世界中で「将来に希望があるか」を聞き、比較した調査によると、日本は幼稚園時に希望度が最も高く、高校になると極端に低下。特に18歳時の将来への希望度が、世界と比べて非常に低い。「明るい未来は自分たちでつくりえるものなんだ」と思う人をつくることが教育のひとつの目的のはずですが、この調査をみる限り、日本の教育には大きな失敗があると思えます。
工藤勇一(以下、工藤):そんないまの世の中をつくった重い責任は、学校教育にあると思います。学校は「みんなで協力すれば、幸せな社会が築けるはず」と思えるよう、対立からの同意を導く力を育むべきです。協働しようとなれば、対立が当然起きます。日本では、対立が起きたら、すぐ「心の教育」で折り合いを付けようとする。そうすると、どこかでひずみが生じて、結局、強いものに巻かれてしまう。
本来やるべきは、「行動の教育」すなわち対話の訓練です。子どもたちに自分で、みんなが望む上位の目標とは何かを考えさせる。そして、その上位目標の下で合意するために、自分の考えを修正する訓練をする。大人から正解を与えるのではなく、当事者である子どもたちに自力で解決させる。すると、未来を協力して築いていく自律した子どもが増えていくはずです。