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2023.06.23

アップル「Vision Pro」が映像コンテンツ業界に起こす地殻変動

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筆者は長年にわたり、ハリウッドの映画業界の幹部と交流する機会に恵まれてきたが、アップルの複合現実(MR)ヘッドセットの「Vision Pro」を試した後に考えたのが、彼らがこの新たなデバイスをどのように捉えるかということだった。

ハリウッド・レポーターも筆者と同じ疑問を持ち、映画業界のテクノロジーの専門家にアップルのヘッドセットをどう思うかを尋ねている。マーティン・スコセッシ監督の3D映画『ヒューゴの不思議な発明』に関わった3D映像の専門家のデメトリ・ポルテリ(Demetri Portelli)は、次のように述べていた。

「アップルの発表を受けて、私は3Dコミュニティからたくさんの興奮気味のメールを受け取った。彼らの製品に初めてステレオカメラが搭載されたことは、非常に意義深いことで、3D映像分野にとって大きな前進だ。私は、アップルのユーザーフレンドリーなインターフェースが実現するステレオイメージの民主化に、大きな期待を寄せている。これまでは、映画館以外で3D映画を快適に鑑賞できるプラットフォームが存在しなかった」

筆者もハリウッドの関係者に意見を聞いたが、彼らもポルテリと同様に、Apple Vision Proに興奮していた。同社はこのデバイスのデモで、関係者に映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の一部を鑑賞させたが、その際に筆者は、まるで自分が登場人物といっしょに水の中にいるかのように感じ、IMAXのスクリーンで見る以上の没入感を味わった。

アップルは、この没入感を実現したのがVision OS用のSDKだと説明している。同社が3Dコンテンツを作るための強力なツールを提供するようになれば、ハリウッドがそのツールを使って映画を作り、Vision Pro向けにオンデマンドで配信するかもしれない。ディズニーのボブ・アイガーCEOは、6月5日のアップルの世界開発者会議(WWDC)のキーノートで、同社がVision Pro向けのコンテンツを作ることを約束したと述べていた。

映画業界がVision Proを3D映画を配信するためのプラットフォームとして受け入れるならば、映画はVision Proの需要を拡大するためのコンテンツの1つになる可能性があると筆者は考えている。

さらに、アップルは、自社で映画やドラマを制作しており、仮に同社がすべてのコンテンツを2Dと3Dの両方で制作し、Apple TV+で独占的に提供するようになったとしたら、コンテンツ分野でも大きな競争力を持ち、Vision Proの需要を後押しすることができるだろう。

スティーブ・ジョブズは、亡くなる直前に伝記作家のウォルター・アイザックソンに対し、彼が作り直したいと思っているテクノロジーの1つに、テレビがあると語っていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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