今回は、次世代ユニコーンの可能性を秘めた起業家による従来のピッチに加え、スポンサーのアメリカン・エキスプレスと共同で、日本の地域課題の解決を目指す起業家に特化した「地域スタートアップ部門」が創設。150社におよぶ応募の中から、一般部門で6社、地域スタートアップ部門で3社が事前審査を通過し、ピッチに臨んだ。
一般部門では、ChatGPTの登場でにわかに注目を集めるLLM(大規模言語モデル)、脱炭素や再エネ活用といった環境分野、DXや医療AI、ドローンなど、時勢に乗った領域でビジネスを手がけるスタートアップが名を連ね、2人が受賞した。
1人目は、企業向けのドメイン特化型LLM開発を支援するSpiral.AIの佐々木雄一。東証グロース市場に上場するAI企業、ニューラルグループの初期メンバーでCTOを務めた佐々木をはじめ、同社のチームはAIの専門家で構成。審査員の早稲田大学ベンチャーズ 山本哲也は、「日本で開発された技術が世界に通用する可能性がある。IPOを経験したメンバーによる優れたチーム力、技術を超えたコンサルテーションによる社会実装力など、審査員一同から評価が高かった」と講評した。
2人目は、債権回収のDXに取り組むLectoの小山裕が受賞した。同社が2021年1月に事業開始した債権管理・督促回収プラットフォーム「Lecto」は、取り扱い債権額が200億円を突破。「トラクションを短期間で非常に伸ばしている。ニーズがそれだけあるという裏返し。市場も巨大でまだまだ伸びる」と、審査員のSBIインベストメント 加藤由紀子はコメントした。
地域スタートアップ部門は、高校生向けの昼食宅配サービスを手がけるPECOFREEの川浪達雄が受賞。審査員を務めたアメリカン・エキスプレス 法人カード事業部門 副社長の谷川美紀は、「自身の経験に基づいた非常に具体性のある事業内容だった。学校だけではなく地域のサプライヤーも応援するような仕組みであった点も、事業の将来性含め評価が高かった」と話した。
ピッチイベントに登場した起業家は次のとおり。(敬称略)
RISING STAR AWARD 2023 一般部門
フェイガー 石崎貴紘農業における脱炭素の取り組みをクレジット化し、企業向けに販売する事業に挑戦。農家の収益増加を支援している。「農業は(海外では)儲かる産業。なのに日本ではなぜか儲からない。これはおかしいと思っている」(石崎)
Spiral.AI 佐々木雄一
企業の活用目的に応じてChatGPTをカスタマイズ可能な「Spiral.Bot」、独自LLMの開発などに取り組む。「ドメイン特化型のLLMは、ビッグテックに対するひとつの勝ち筋」(佐々木)
Lecto 小山裕
債権管理や督促回収において、架電やメール配信など、人力で行われていた業務を自動化するプラットフォーム「Lecto」を開発・提供。「同じフェーズのスタートアップと比べて、相当なスピードで成長できている。強気しかない」(小山)