米沿岸警備隊によると、カナダの対潜哨戒機P3が音を探知したあと、捜索チームは遠隔操作の機材を使った捜索活動の場所を変更した。ただ、これまでのところ潜水艇は発見されていない。P3が収集したデータは米海軍と共有され、さらに分析が進められている。
米OceanGate Expeditions(オーシャンゲート・エクスペディションズ)が運営する潜水艇「タイタン」は18日、カナダ東部ニューファンドランド沖で潜水してから2時間たらずあとに連絡がとれなくなった。同社のストックトン・ラッシュ最高経営責任者(CEO)や英実業家のハミッシュ・ハーディングら5人が乗っているとみられる。積み込まれていた酸素は96時間分とされ、米沿岸警備隊は20日午後、残りの酸素が約40時間分に減ったと述べていた。
この潜水艇をめぐっては、開発時の安全性確保がずさんだったのではないかという疑念が高まっている。専門家らは、そもそもなぜタイタンのような潜水艇が商業旅行を認められたのか疑問を呈している。
米CBSテレビによると、タイタンは米レクリエーション車(RV)メーカー、Camping World(キャンピング・ワールド)のパーツを使って作られ、Logitech(ロジテック、日本ではロジクール)の2011年製ゲーム機コントローラーで操作するという。
CBSのデービッド・ポーグ記者は半年ほど前のリポートで、タイタンを「つぎはぎ」でこしらえられたものと表現。CBSはタイタンについて「どの規制機関からも認証を得ていない」とも報じている。
専門家団体は5年前に「一致した懸念」
一方、米紙ニューヨーク・タイムズは20日、専門家の団体が2018年にラッシュに宛てた書簡で、タイタンは業界の基準を満たしておらず、「大惨事」を生みかねないと警告していたと報じた。団体はタイタンによるタイタニック号ツアー計画に「一致した懸念」を示し、オーシャンゲート社について、船舶の安全性の指針として広く認められているDNV-GL(ノルウェーの認証機関)の船級規則に従う意思もないようにみえると苦言も呈していたという。オーシャンゲート社側が書簡に返答したのかや、試作機をDNV-GLに送って評価を受けるよう求めた団体側の勧告に従ったのかは不明。
ツアーの参加者には、タイタンが「実験的」な機材だということが明示されているとされる。オーシャンゲート社は2019年のブログ投稿で、リスクの軽減に取り組んでいると説明する一方、「イノベーションは業界の既存パラダイムから外れることが多い」として、DNV-GLのような専門機関の認証を得ても安全が保証されるわけではないとの考えを示していた。
昨年、タイタンに乗ったという米国の作家・プロデューサーのマイク・リースは20日の英BBCのインタビューで、「1ページ目に3回も『死』という言葉が出てくる」大部の同意書に署名したと語っている。潜水艇に乗り込む際には「これで(人生の)終わりかもしれない」と思ったといい、「誰もが覚悟はできていた」と振り返っている。
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