ビジネス

2023.06.23

40年「人とお金の関係」を探る識者が語る「お金は自身を映す鏡である」

─「マネーワーク」のワークショップはどういうものですか?

「マネーワーク」の目的は、お金に対して自分の考えを投影しており、それが人生に影響を及ぼしているという投影の仕組みに気づいてもらうことです。お金に対する思い込みの枠を外すことによって、人生を解放し、自分が本来達成したいイニシアチブに集中できる状態をつくります。

そのために、参加者との対話を通じて、その人がお金に対してどんな投影をしているかを見つけます。「こういうことですか?」と投げかけ、本人にそれを声に出して言ってもらいます。口に出した言葉がぴったりなものだったときは、その人の体が緩んでリラックスするのです。それは、その人がお金から解放され、自由になった瞬間です。

具体的な例としては、経営者が「借金は悪いもの」という投影に気づくことで、イニシアチブの達成に必要な資金調達の自由度が上がることがあります。また、従業員が自分で給料を決めるシステムを導入しようとしている企業のサポートをしたこともありました。個人では、相続や離婚における財産分与の例があります。現在は私だけではなく、世界中に私の考え方に共鳴してくれた100人以上のプラクティショナー(実践者)がいて、マネーワークを広げてくれています。

おカネに関する「穏やかな革命」


─お金についての現在の考えを聞かせてください。

30年間の実践を通じて感じたのは、成功とお金の関係の認識がパターン化されていることです。「結局はお金」「利益を出さないとダメ」という考え方が当然のものとされています。産業革命以降の社会システムのなかで、この考え方が親世代から子世代へと受け継がれた結果、とても強固なものになっているのだと思います。

パターン化された考えを無意識に投影していることに気づかずにいると、鏡に映ったものを真実だと思い込み、人生を取り込まれてしまいます。利益を出し続けることができなかったら、事業もしくは自分自身の存続が危うくなるという恐怖を常に感じてしまうのです。そのために、お金にばかり注目するようになり、自分のビジョンや企業のパーパスから、お金の方に中心がどんどんずれていってしまいます。マネーワークでも、参加者の方々の「お金がなかったら、自分の仕事は立ち行かない」とか、「お金がなくなると自分の存在そのものも危うくなる」といった投影をたくさん扱ってきました。
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インタビュー、編集=ひらばやしふさこ、写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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