西条市に日本初の「ゼロエネルギー」ホテル 脱炭素時代のまちづくり

西条市の風景からインスピレーションを得たホテルは、日本を代表する建築家、隈研吾氏による建築設計

いよいよ暑い夏の気配がする6月、大手電力7社の電気料金が一斉に値上げとなった。その主な原因は、世界的な燃料価格の高騰や、為替の影響による液化天然ガスや石炭などの輸入価格の高騰だ。

日本のエネルギー自給率はたったの13%*。輸入化石燃料に依存する限り、私たちはこれからも価格高騰や配給不足などの先の見えない不安から逃れられない。

そんな時期に愛媛県西条市に誕生したのが、日本初のゼロエネルギーホテル「ITOMACHI HOTEL 0(ゼロ)」だ。ホテルの企画と運営に関わるGOODTIME代表取締役の明山淳也氏に、今後さらにその実現が急がれるであろう脱炭素社会へ向けたまちづくりについてうかがった。

*World Energy Balances 2022、BP統計、EIA、Oil Information、Cedigaz統計、Coal Information、貿易統計より2021年時点

エネルギーをキーワードにはじまったまちづくり

愛媛県西条市に新しく誕生した「いとまち」の全体マップ

愛媛県東部に位置する西条市は、海と山に囲まれた自然豊かな“水の都”として知られる一方、製造業をはじめとしたさまざまな企業が工場を構える四国最大規模の工業地帯でもある。

人口が約10万人で、多くの地方都市と同様に移住や少子化を起因とした“衰退”という課題を抱えていた西条。そこで立ち上がったのが、1995年の創業以来この地を見つめ続けてきた地元企業、アドバンテックだった。

グローバルでの半導体関連機器製造を中心に、近年は再生エネルギーや地方創生・まちづくり事業も展開している同社は、市内でぽっかりと取り残されていた約6ヘクタールの土地を購入。その地を「いとまち」と名付け、エネルギーを主要コンセプトに据えた開発プロジェクト「糸プロジェクト」を始動した。

本プロジェクトでは、東京大学・隈研吾研究室によるマスタープランをもとに、戸建て住宅で形成される住宅ゾーンと、ホテルや温泉などがある商業ゾーンを形成。2020年にはマルシェやマーケット、レストランなどが集まる複合商業施設を開業した。そして2023年5月27日、ホテル「ITOMACHI HOTEL 0(ゼロ)」がオープンとなった。
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文=佐藤祥子

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