2023.07.02

時代を読む、ストーリーのあるホテル No.29「ギャリア・二条城 京都」

高級感のあるシンプルなホテル外観、右にある入り口を入ると緑の垣根が続くアプローチがあり、エントランスへと誘われる。

梅雨真っ盛りの季節、コロナ収束の解放感も手伝い世界中のトラベラーが平和な時空を謳歌し、旅を始めている。

だが社会の最前線で活躍するエグゼクティブたちは多忙のために、旅がなかなかできないという人もいるかもしれない。

それでもせめて週末、お気に入りのホテルにチェックインし、週の始まる月曜の朝まで、自分流のホテルライフを楽しんではいかがだろう。

日本の2023年は、数えきれないほどの魅惑のホテルが新規開業をし、さらに、数々の老舗ホテルでも新たな戦略が披露されている。

ホテルジャーナリスト せきねきょうこ


二条城の南隣で静かなる滞在、スモールラグジュアリーホテルの快哉

ホテル「ギャリア・二条城 京都」の滞在は、町の中心にあるとは思えない静けさの中で時が過ぎていく。しかしホテルの周囲は京都の名所旧跡が点在する街の中。一歩外に出ると、世界遺産・二条城が目の前に迫りくるロケーションの良さから、京都観光にはとても便利な場所にある。世界中の観光客が憧れる古都の賑わいから離れ、ホテル館内に入りロビーに着くや否や、大きなガラス張りの窓を通して映りこむ緑の庭園にはホッとするだろう。

ロビーへと続く緑の美しい竹のアプローチはいかにも京都らしく印象的。 茶室へと誘う「露地」を思わせる。

ロビーへと続く緑の美しい竹のアプローチはいかにも京都らしく印象的。茶室へと誘う「露地」を思わせる。


ロビーでは、まるで庭に座っているかのような自然との一体感に包まれる。今の時期、初夏を迎えた瑞々しい緑と、輝く絨毯のように苔生す庭の光景がロビーに迫りくる、気持ちの安らぐ空間だ。庭園の木々の中に、1本だけ赤く色づいた葉を持つ木を見つけた。「あれは夏紅葉のように夏に赤い色が楽しめるのです」とスタッフ。なるほど、美しい庭園のアクセントツリーである。

全面ガラスで庭が映り込む石のテーブルに高揚感。まるでテーブルが水場のように外の景色を映し出しているのが印象的で、苔むした庭園との一体感を感じる。

全面ガラスで庭が映り込む石のテーブルに高揚感。まるでテーブルが水場のように外の景色を映し出しているのが印象的で、苔むした庭園との一体感を感じる。


ホテルの外観を一見すると十分に大きいホテルに見えるものの、客室はわずか25室に抑えられ、贅沢な設えの客室が揃うスモールラグジュアリーホテルだ。インテリアデザインは、日本を代表する空間デザイナーの橋本夕紀夫氏が担当した。世界的に活躍をしていた橋本氏は、22年3月、惜しくも若くして急逝された。「ギャリア・二条城 京都」は、橋本氏が伝統工芸にこだわり、京都芸術遺産へのオマージュをスタイリッシュに表現したと言われるアートなホテルでもある。ロビーエリア以外、全体的にほの暗い館内だが、「理由があるんです」と総支配人。ここそこに飾られているアート作品のライティング効果をより際立たせ、ゲストの視線を素晴らしい作品に向けたいというのだ。

「ギャリア・二条城 京都」では、アートとは別に、滞在中にゲスト一人ひとりが心身の束縛から解き放たれ、‘身心脱落’という「ZEN」の精神に導かれ、シンプルステイで己と向き合う瞬間が持てるようにと願っている。‘ウェルビーイング’を掲げているのも、その精神に基づいている。
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文=せきねきょうこ

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