いまでは、誰もが当たり前のように使っているスマートフォンのタッチパネル。
指で入力できる液晶パネルは、故障や破損の恐れがある物理的なボタンから人々を解放した画期的な発明だ。
iPhoneは静電容量方式のタッチパネルを搭載しているが、これはタッチパネルの表面に形成された電気に指が触れることで、表面電荷の変化をとらえて位置の検出を行う。
そのため、手が濡れている場合や手袋を着けている場合は思うように入力ができないなど、環境によっては使い勝手が悪い。
だが、そんな課題を解決するかもしれないアイデアが誕生した。
「HSS(ヒューリスティック・シグネチャ検出)」と呼ばれ、現在のタッチパネルよりも少ないエネルギー量で安定した動作を可能にする方式だ。
この方式なら、指が濡れたり汚れたりしていても、あるいは手袋を着けていようとも操作できるという。
開発したのは、米タッチパネル開発企業「アルセンティス」の創業者、デビッド・コールドウェル(58)だ。
HSSの最大の特徴は、静電容量方式のように表面電荷の変化を検知するのではなく、「タッチシグネチャ」という、実際に表面上での接触そのものを感知できるシステムを置くことである。
HSSは“接触認識領域”を設けることにより、指が触れることで表面電荷の変化を認識するだけでなく、その接近速度や接触時間、接触位置まで計測できる。
その結果、画面に触れたものが指なのか、水滴なのか瞬時に把握することが可能だ。
アルセンティス社は現在、これをクルマや工業機械、台所製品のボタンと置き換えられるよう、特許を取得しようとしている。
HSSによって劇的に進化するのはスマホだけではない。電気のスイッチや自動販売機まで、ボタンの付くモノすべてが変わるかもしれないのだ。