先日、Appleが最先端MRヘッドセット「Vision Pro」を発表しました。これはAppleのラインアップにまた新たな洗練されたデバイスが加わったというだけの話ではありません。「MR（ミックスド・リアリティ：複合現実）とジェネレーティブAI（生成系AI）の融合」という、技術的に極めて重要なマイルストーンに到達したことを意味するのです。このMR・AIの組み合わせは、今後10年以内にMRをメインストリームに押し上げ、カンブリア爆発のごとくイノベーションを生み出す起爆剤となる可能性があります。そのときにはスタートアップにとっても、幅広い分野で数多くの機会がもたらされるでしょう。
Vision Proの重要な特徴は、一見些細な点ですが、ユーザーの「目」をデバイスの外側に映し出す技術にあります。これにより外界から遮断されている印象が軽減され、装着中も周囲の人たちと自然な形で交流することができるのです。また、アイトラッキング技術やジェネレーティブAIを活用することで、Vision Proはリアルで没入感のあるビデオ会議を実現することも可能となるでしょう。まるで同じ部屋にいるかのようにユーザー同士で交流できる上に、ゴーグルを装着していない状態の、写真のようにリアルな自分の姿を映し出すこともできます。Meta社のアバターを中心としたメタバースの目指す世界と比べて革新的に違う点の1つです。
Appleがこのデバイスの技術をあえて「メタバース」ではなく「空間コンピューター」と表現しているのには、「Vision Proを従来のパソコン、ひいてはスマートフォンに代わるものへと進化させる」という同社の壮大な野望を示唆する意図もあるようです。AIとMRを組み合わせることで、私たちのデジタル・インタラクションのあり方を再定義し、平らな画面から没入型の3D環境への移行を実現することを同社は目指しているのです。とはいえ、このビジョンには批判や課題もあります。
