宇宙

2023.06.21 14:00

「暗黒宇宙」解明に挑む、欧州の宇宙望遠鏡ユークリッド

 ユークリッド・ミッションの想像図(ESA)

1世紀近くの間、私たちの住むダークユニバース(暗黒宇宙)は、理論家と天文学者の両方を当惑させてきた。世界最高の望遠鏡を使っても、澄み切った夜空で見えるものは、私たちが知る宇宙のごくわずかな部分でしかないのだ。

ダークマター(暗黒物質)は宇宙の約27%を占め、光を発することも吸収することもないが、その重力は通常物質を引き付けている。ダークエネルギー(暗黒エネルギー)は宇宙膨張の不可解な加速の原因であり、宇宙の68%をも占めている。肉や骨、恒星や惑星などからなるノーマルマターは、既知の宇宙のわずか5%以下でしかない。

暗黒の領域への理解が深まることへの期待

来月打ち上げられる欧州宇宙機関(ESA)のユークリッドミッションは、NASAが提供する赤外線検出器を搭載しており、ダークマターとダークエネルギー、両方の物理的性質について新たな手がかりを見つけることが期待されている。直径1.2mの望遠鏡ミッションがすべての答えを出すとは誰も思っていないが、理論家たちが熟考するための新たなデータを豊富に与えてくれるはずだ。

宇宙望遠鏡ユークリッドの特別なところ

ユークリッドは過去100億年の宇宙時間にわたる大規模構造を解読するだろうとESAはいう。その過程で、15億個の銀河をハッブル宇宙望遠鏡並みの解像度で撮影し、並行して銀河5000万個に関する分光的赤方偏移データを取得するという。

ユークリッドには科学機器が2台搭載され、そのうち1つは赤外線を使用するとユークリッドの科学責任者でNASA JPL(ジェット推進研究所)の観測的宇宙論研究者ジェイソン・ローズはいう。「ダイクロイック」という光学素材を使って、入射する光を可視光線と赤外線に分離し、それぞれを対応する機器に送り込む。どちらの機器にも膨大な画素のカメラが搭載されており、空の観測とデータ収集を同時に行う。

7月に予定どおり打ち上げられた場合、ユークリッドの6年にわたる科学ミッションは、地球から約150万kmにある地球と太陽が重力的に安定する点であるL2で今年12月に開始される。ユークリッドは空の1万5000平方度(1平方度は一辺を1度とする正方形と同じ面積を持つ球面を切り取る立体角)の範囲を観測できる。可視光および近赤外線の両方で膨大な解像度の巨大な地図を作ることが可能だ。
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翻訳=高橋信夫

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