なお、TikTok Shopは、TikTokが2021年8月に米国Shopifyとの提携により導入したショッピング機能(TikTokショッピングタブや商品リンクなど)とは異なります。旧機能では、ユーザーはアプリ内で直接購入するのではなく、企業のウェブサイトを通じて最終的に購入する必要がありました。
米国市場でのTikTok Shopの開始は、同社が米国でのEコマース展開を本格的に行う姿勢を示しています。他市場での同機能の成功を踏まえると、米国のブランドや小売企業にとって、TikTok Shopから得られるメリットを十分に理解することは重要でしょう。
本稿では、TikTokが2022年11月に米国で開始した新機能TikTok Shopに関して、同社の米国市場でのEコマース戦略の本格的な進出について探っています。
市場規模とビジネスチャンス
Coresight Researchが2022年3月に実施した最新の年次ソーシャルコマース調査によると、米国の消費者の90%がソーシャルメディアを利用しており、65%が商品の発見や調査、購入など、買い物過程の一つとしてソーシャルメディアを利用していることが分かりました。本調査では、TikTokは人気のソーシャルメディアプラットフォームであるFacebook、Instagram、Pinterest、YouTubeと並んで、米国のソーシャルコマース市場の主要プレイヤーであることが分かりました(図1参照)。
図1. 買い物過程の一つとしてソーシャルメディアを利用する米国の消費者が、 2022年に利用したトップソーシャルメディアプラットフォーム
(図内の訳、コメント「米国消費者の65%が買い物過程の一つとしてソーシャルメディアを利用している」)
対象:買い物過程の一つとしてソーシャルメディアを利用している18歳以上の米国人回答者899名(2022年3月調査)
出典:Coresight Research
中国メディアの36Krによると、2021年、TikTokのEコマース部門は9億5100万ドルの商品総額を売上げ、そのうちインドネシアと英国がそれぞれ70%と30%を占めたといいます。
また、中国のEコマースニュースのDSBによると、TikTokのEコマース商品総額は2022年に東南アジアだけで44億ドルに急増し、同年に東南アジア5カ国に進出したTikTok Shopがこの地域で急速に成長していることが明らかになりました。
とはいえ、この金額は、中国で運営されているTikTokの姉妹アプリで、同じ親会社であるBytedanceが運営するDouyinと比較すると見劣りするかもしれません。Douyinは、Caixinなどの中国メディアによると、2021年に8000億元(1185億ドル)の商品総額を流通したとされていますが、Bytedanceはこの数字は不正確であると回答しています。
一方で、中国のEコマースニュースEbrunは、2022年、Douyinは中国国内で2080億ドルという大きな売上を達成し、前年比76%の成長を記録したと報じています。Douyinはこの数字も否定していますが、中国メディアのLatePostや、Eコマースシンクタンクの創設者であるLi Chengdong氏が書いた記事など他の情報源によると、この数字はかなり正確であるとされています。
この膨大な売上達成は、中国国家統計局が発表した、2022年に総額138億元(約2兆円)に達した中国の巨大なEコマース市場が背景にあると思われます。
TikTokは、Eコマース領域でグローバルに急速かつ大きな成長を遂げており、米国市場への継続的な投資により、同様の力強い成果を達成するための大きなステップを踏みだしたといえるでしょう。