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2023.06.20 11:15

ジャック・マーが公の場に復帰 ただし実業家ではなく教育者として

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中国のネット通販大手アリババの共同創業者で、同国で最も裕福な人物の一人である馬雲(ジャック・マー)は過去数年にわたり、中国政府の怒りを買って注目を浴びることを避けてきたが、ここにきて徐々に公の場に姿を見せるようになっている。ただその動向からは、ビジネス界の巨人としての地位を取り戻すのではなく、教育者としての原点に戻ろうとしていることが示されている。

マーは17日、アリババの本社がある中国東部・杭州市で同社が主催した国際数学コンテストの決勝戦に姿を見せた。中国メディアがアリババの子会社Damo Academy(ダモー・アカデミー)の発表として伝えたところによると、マーはコンテスト参加者や教師と会話し、決勝進出者と「数学を理解すること」について議論したという。

これに先立つ12日には、東京大学で、同大の客員教授に就任後初の講義として、「イノベーションと起業家精神」をテーマとする2時間にわたるセミナーを開いた。同大の研究組織「東京カレッジ」との共催で行われたこのセミナーは、経営理念や若い世代が将来成功を収めるための方法などに焦点を置いたものだった。マーは、日本、中国、インド、マレーシアなどからの学生に対し、「豊かな経験や先駆的・革新的な知見」に基づいた講演を行ったという。

マーは、アジアで最も知名度の高い実業家の一人であり、中国で最も大きな発言力を持ち精力的な億万長者の一人だった。だが、マーが規制当局を批判し、中国政府がハイテク業界に対する締め付けを開始した後、2020年に公の場から姿を消した。居場所と安否については臆測が飛び交う中、マーは雲隠れを続け、ビジネスの第一線から身を引いた。

公の場から姿を消した当初は、当局に拘束された可能性や、当局に対する公の批判を理由に中国政府から罰せられた可能性が取り沙汰された。その後の報道からは、かなりの期間を外国で過ごしていたことが明らかになっている。しばらく東京に滞在していたほか、タイや欧州でも目撃された。今年3月には、中国への帰国が報じられたが、このまま中国にとどまるつもりなのか、一時滞在なのかは不明だ。

マーは徐々に公の場に戻っているようだが、活動の多くはビジネスよりも教育に関するものとみられる。3月に帰国した際には、杭州にある学校を訪問し、人工知能(AI)が教育にもたらす問題について語ったと報じられた。その他の公の場での活動や公表された役職も教育に関連しており、いずれも中国本土以外でのものだ。東大の客員教授職に加え、ルワンダのアフリカン・リーダーシップ大学とイスラエルのテルアビブ大学の客員教授、香港大学の名誉教授も務めている。

フォーブスのリアルタイム世界長者番付によると、マーの資産は推定244億ドル(約3兆4610億円)で世界66位。元英語教師のマーはかつて中国で最も裕福な人物だったが、国内7位となっている。資産の多くは、1999年に創業し、世界最大級のeコマース企業に成長したアリババに関連している。マーはまた、フィンテック大企業のAnt Group(アント・グループ)の株式も保有している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

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