海外

2023.06.21 08:00

10年前にグーグルに会社を売ったイスラエルの連続起業家の告白

安井克至
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Getty Images

スタートアップ大国として知られるイスラエルは、数多くの著名な連続起業家を送り出している。なかでもスマホが登場して以降のモビリティビジネスに革命を起こした人物として知られるのが、カーナビアプリ「Waze」の創業者のウリ・レビン(Uri Levine)だ。ここでは、彼自身の言葉で世界で最も利用されているカーナビアプリをグーグルに売却した経緯や、その後のチャレンジを語ってもらった。

2013年6月に、私はカーナビアプリ「Waze」をグーグルに11億5000万ドル(約1630億円)で売却した。当時、この金額はコンシューマ向けアプリの買収額としてとして史上最高額であり、私や共同創業者をはじめとする社員たちや、イスラエルのハイテク・エコシステムに大きな影響を与える出来事だった。

私は、この決断が正しかったのか、またこの10年で何が変わったかよく尋ねられる。そこで、これらの質問に対する私の考えを述べてみたい。

現在のWazeの価値が11億5000万ドル以上かと問われれば、答えはイエスだ。2013年に比べてユーザー数は10倍、売上高は100倍に増えており、現在の価値は確実に売却金額を上回るだろう。しかし、別の道を歩んでいたら、会社がここまで成長できていたかはわからないし、存続できていなかったかもしれない。

ヤフーは、グーグルを500万ドル未満で買収する機会を2度逃した。今となっては、同社が大きな判断ミスをしたということができるが、実際に買収していたらどうなっていたかはわからない。ヤフーは、ネットフリックスを買収するチャンスも逃している。しかし、仮に買収をしていたとしても、ネットフリックスが今日と同じ成長を遂げていた可能性は低いだろう。



世界で最も人気のカーナビアプリ

Wazeは、現在でも世界で最も人気のあるカーナビアプリだ。ダウンロード数は約6億5000万回に達し、最も愛用されているアプリであることは間違いない。ユーザーに使用頻度を尋ねると「運転するときは必ず使っている」という答えが返ってくる。

ユーザーの中には、Wazeが10年前に比べて改善したという人もいれば、使いづらくなったという人もいる。私がこのアプリによって解決しようとしていた交通渋滞は、当時に比べて多くの場所で悪化している。私はWazeの売却後に、新たなスタートアップを12社ほど立ち上げたが、もしタイムマシンがあったら、私は別のことをしていただろうか? 答えはおそらくノーだろう。

個人的には、Wazeにとって最大の失敗は、カープール(相乗り)サービスを閉鎖したことだ。これがうまくいっていれば、このアプリは交通渋滞の緩和に大きく貢献しただろう。
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編集=上田裕資

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