船井総合研究所が社会性・教育性・収益性・成長性・環境性を兼ね備えた持続的成長企業を褒賞する「GREAT COMPANY AWARD 2023」。本年度は、約5,300社の選考対象法人から、さまざまな業界で活躍する18社をノミネートし、そのなかから特に優れた7社の受賞を決定した。このアワードで『社会貢献賞』を受賞したのが、かすもり・おしむら歯科だ。「誰ひとり取り残さない地域を創る」という想いを純粋に掲げ、日本の社会的課題である「地域包括ケアシステム」の実現を進める歯科医院の挑戦を紹介しよう。
2023年4月28日に厚生労働省が公表した「医療施設動態調査(令和5年2月末概数)」によると、全国の歯科診療所の数は67,492とされている。日本フランチャイズチェーン協会の23年4月度「コンビニエンスストア統計調査月報」によると、全国のコンビニエンスストアの店舗数は55,759である。
歯科はコンビニよりも数が多く、地域の人々にとって、より身近な存在と言える。その歯科には、「口腔の健康」を超えて創出できる社会的価値があるのではないか。
「口腔の健康は全身の健康にもつながります。いま、歯科には『口腔健康管理の充実を起点にして人々の健康寿命の延伸に貢献する』ことが求められているのです。そのための一歩として、歯科は口腔内の疾患を治すだけでなく、むし歯や歯周病になる前の予防に注力することが必要です。かすもり・おしむら歯科では、『予防処置』に本気で取り組んできました」
かすもり・おしむら歯科は、20年6月に名古屋市中村区烏森(かすもり)町にて開院した。院長の押村憲昭は、定期通院と予防処置が当たり前になりつつある時代に一定の充足感を覚えながらも、さらなる使命感に駆られている。
「他の医院とは違って定期的な通院が可能な歯科だからこそ、そこで働く私たちがしっかりとアンテナを張ることにより、人々の健康にもっと寄り添えるのではないか。歯科は、ひとりの患者さんを生涯連続して診ることができます。かかりつけの歯科医が他の医科をはじめとする地域の関係職種・関係機関と連携することにより、人生100年時代において全身の健康を守るための取り組みが可能になるのではないか。そのように考えています」
未病(まだ発病はしていないが、健康な状態から遠のきつつある状態)への挑戦。かすもり・おしむら歯科は、その枠組みを口腔から全身に拡げようとしている。いま、歯科ならではの使命と情熱を強く胸に抱いた押村を起点に「地域医療のオープンイノベーション」と形容できるフレームワークが地域に生まれ、成長を遂げているところだ。
「歯の疾患は、生活習慣に起因しています。そのため、歯に疾患を抱える人は内臓に疾患を抱えている、あるいはその予備軍であることが多いのです。逆も然りで、糖尿病になる生活習慣の人は、歯の健康状態も良好ではなかったりします。生活習慣病という括りで言うと、いろいろな病気がリンクしているのです。それなのに内科は内科しか診ない、歯科は歯科しか診ないという状況がありました。しかし、内科の先生が歯科の先生に、歯科の先生が内科の先生に、普段から声を掛け合うことによって未病のフェーズでの効果的なアプローチが可能になります」
この地域、街全体を総合病院にしていきたい。押村は地域のさまざまな医科の先生に自身の考えを伝えて、協力を仰いだ。地道な声がけを続けた結果、その熱意は地域医療のワンチーム体制構築(内科、皮膚科、整形外科など約30のクリニックが連携)につながっていった。押村の地域への想いは深い。
「かすもり・おしむら歯科では、地域の人々の健康を支えるために『医療が街に出る活動』も行っています。目の前だけでなく、困っている人を探し、会いに行くことで手が届いていない場所にも医療を届けていきたいのです。誰ひとりとして取り残さない地域を創りたいと考えています。それは例えば、駅前に出て歯磨きの大切さを啓蒙するために歯ブラシを配ったり、地域の老人会や町内会の集まりに参加したりという草の根的な活動から始まるものです。当然ながら、通院が困難になっている人のために訪問診療も行っています」
誰も行かないところでこそ、我々は必要とされる。これは、アフガニスタンなどで人道支援に取り組んできた中村哲医師が遺した言葉だ。押村は、国際NGO「ペシャワール会」の一員でもある。「医者なのに井戸を掘る中村哲」と会い、押村は自分の人生が変わったと語る。
人は愛するに足り、真心は信ずるに足る。すべては考え方次第、発想次第だ。「歯科医として地域の『食べる』を支えたい!」という想いから、かすもり・おしむら歯科は「こども食堂」も開いた。そこでは、「むし歯予防教室」も同時開催している。
かすもり・おしむら歯科 口腔機能クリニックhttps://kasumori-oshimura.com
押村憲昭◎2010年、愛知学院大学歯学部を卒業。11年から敬天堂歯科、15年から医療法人大里会、17年からおしむら歯科にて勤務。20年、かすもり・おしむら歯科を開院。コロナ禍で誰もが街から消えた20年6月に開業して、22年には年商で約2.9億円を記録。歯科診療所(個人)の医業収益平均を大きく上回っている。
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