ビジネス

2023.06.21 09:00

ビジネスにも通じる、最前線に立ち続けるプロゲーマーの「覚悟」

Forbes JAPAN編集部
3956

反射神経だけではない要素を鍛える

北野:僕、普段の仕事では全然怒ることはないのに、ゲームで負けるとすごく感情的になっちゃうんです(苦笑)。これは、なんででしょうね?

梅原:ああいう速いゲームは、理性を保つ猶予がないんですよ。だからどうしても動物的というか、感情的にならざるをえない。おそらく、人間が理性を保つまでに必要な時間があるのだと思います。
 
普段の仕事では、その瞬間、瞬間で動かなくて、徐々に進みますよね。だから「俯瞰して全体のことを考えてこうするべきだ」という余裕がもてる。でも、速すぎると感情が先に出ちゃうんです。飲食店の人たちが、すごく忙しい時間帯にピリピリしているのに近いかもしれない。

北野:梅原さん自身、プレイ中に感情は出ますか。

梅原:出ます。「バシッとたたかれたら痛い」みたいなもので、やられてムカッとするのは反射なんです。集中しているときほど、ムッとなりますし。でも、動物的な部分を出さないことは訓練で可能だと思います。

北野:プロゲーマーは生涯続けられる仕事ですか?

梅原:ゲームの世界において、一般的にプロで長く続けるのは難しいです。格闘ゲームの場合、リセットが入るから積み重ねがもてません。それ以外のジャンルの話だと、20代中盤までもったら長いほう。

北野:そうなんですか!

梅原:例えば、チームでやるFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)は「リアルタイムストラテジー(RTS)」という世界中で人気のゲームジャンルですが、瞬時の判断とか、反射神経的な要素が求められるので、若い人ほど強いようです。
 
そういう要素は、もちろん格闘ゲームにもありますが、そこまで「若いから勝つ」という図式にはなっていません。最前線にいられるだけ、とことん現役でこの仕事を続けたいと思います。
梅原大吾◎1981年、青森県生まれ。15歳で国内最強となり、98年に17歳で世界大会優勝。その後、一度はゲームの世界を離れて介護職員として働いた後、2009年の世界大会優勝をきっかけに現役復帰。世界的ゲーム機器メーカーとプロ契約を締結し、日本初のプロゲーマーに。同年「世界で最も長く賞金を稼ぐゲーマー」としてギネスに認定。グローバル企業4社のHP、Red Bull、Mildom、Hit Boxを個人スポンサーにもつ。愛称は“The Beast(野獣)”。

北野唯我◎1987年、兵庫県生まれ。作家、ワンキャリア取締役CSO。神戸大学経営学部卒業。博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。子会社の代表取締役、社外IT企業の戦略顧問などを兼務し、20年1月から現職。著書『転職の思考法』『天才を殺す凡人』『仕事の教科書』ほか。近著は『これから市場価値が上がる人』。

文=神吉弘邦 写真=桑嶋 維

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事