梅原:月並みですが「義務感」は発生します。ただ、それよりも大きかったのはゲームをする場所の変化でした。僕がプロになった年から、自分のやっていたゲーム(カプコンの「ストリートファイター」シリーズ)が家庭用に移行したんです。家庭用だと24時間やれてしまうので、終わりがない。一日に十数時間、ひどいときは20時間以上やっちゃうとか──これは明らかにやりすぎです。
培ったものをスッパリ捨てられるか
北野:世界最強のゲーマーとして働くうえで、天性の「才能」と「努力」の要素、あとは「運」などの条件を整理すると、重要なのは。梅原:自分がやっている格闘ゲームの世界でいえば、「運」の要素は必要ありません。ほかのふたつは、単純にプレイヤーの数の問題です。
真剣な人が増えるほど「才能」の比重が高くなります。反対に、真剣な人が少ないほど「努力」の比重が高くなる。自分の場合、プロゲーマーがいない時代に格闘ゲームを真剣にやったので、ひとり勝ちでした。将来、ゲームが競技としてどんどん発展していったら、努力するのは当たり前になり、セオリーが何となくできてくる。すると、才能の勝負になるんだろうなと思います。
北野:遠い未来、2050年くらいにプロゲーマーという職業はどうなっていると考えますか?
梅原:そのころだと「この仕事はないかもな」という気もします。僕がゲーム業界で好きなところは、進化や変化の速さです。
もっとスピーディで刺激的な遊びが出たとき、それが「ゲーム」のくくりで呼べなくなるかもしれない。現状だと、目と頭を使った遊びとしてeスポーツが最先端といっていいと思いますが、もっと新しい世界で「指も使わない」とか、「目線だけ」「思考だけ」、もしくは「声だけ」となったとき、僕は絶対に入っていけません(笑)。これまで指さばきを鍛えてきた人間は全滅でしょう。でも、そういう世界だからこその刺激があって面白いんです。
北野:ゲームの進化や変化の速さを、普段はどんなところに感じますか。
梅原:競技としてのゲームに対して、頻繁に「リセット」が入ることでしょうか。例えば、この6月に「ストリートファイター6」というゲームが出ます。すると、前作の「ストV」というゲームの常識は1回捨てないといけない。
ほかのタイトルも然りですが、新作では「前作で勝っていた人たちが勝ちにくいゲーム」がつくられます。さもないと、新規のプレイヤーが入れないので。