私にとって「〆切」とは「何度も助けてくれた恩人」です。
私は個人活動としてアナログゲームを制作しているのですが、あくまで私的なプロジェクトですので、早くやりなさいと誰も言ってくれませんし、何もしなかったとしても誰も困りません。自分自身でコントロールするしかないのですが、このとき〆切は絶大な効果を発揮するのです。私の場合、毎年春と秋に東京ビッグサイトで実施されるボードゲームの祭典「ゲームマーケット」に出展申し込みをし、当選すれば〆切が発生します。
まずは申し込むこと。すると自然とプロジェクトが走り出します。おかげで、2016年から毎年欠かさず新しいアナログゲームを発表することができました。半年に一回やってくる〆切が、クリエイティビティの原動力となっているのです。
このように、「〆切」は人の行動を変える力があります。私たち電通Bチームでよくやる「24時間返信」。全メンバー(50人以上)から広く助言をもらいたいときに一斉メールをするのですが、その際に24時間以内での返信がルール。
忙しいメンバーに24時間以内の返信を要求する。無茶なお願いのようにも聞こえますが、なんとものすごいスピードで返信がくるのです。しかも何人からも!24時間に限定すると、メールを受け取った側はじっくり考えることも、調べる余裕もありませんので、いま自分がもっている情報や直感的に感じたことを返信すればよい(するしかない)ので、むしろ最小限の労力で返信ができるのです。
なかには「えっ、それいま思いついたんですか!?」というアイデアをいただけることも。〆切は時間が長ければ良いというわけでもないようです。
制約はクリエイティビティの種。その制約のなかでいちばん身近で、誰でも扱えるのが「〆切」なのです。クリエイティビティを飛躍させるため、プロジェクトを円滑に進めるため、チームをマネジメントするために「〆切」を上手に扱う。これを「〆切のデザイン」と呼んでみます。では〆切はどのようにデザインすればよいのでしょうか。
ふわっと長い〆切は小分けに
長期のプロジェクトで終わりだけに〆切が設定されている場合には、まずは〆切を小分けにしてみましょう。プロジェクトの進捗を都度チェックできますし、フィードバックも入れることで、チーム全体で共有が進みます。定例会を設定することに似ているかもしれません。ただし、定例会は情報共有には向いていますが、新しい発想が必要とされる場面にはあまり向いていないように感じます。毎週同じことを繰り返していると、発想もありきたりになりがちだからです。発想が必要なときは思い切って極端な制約を加えましょう。