医療の世界でよく使われる「チーム医療」とは、多職種の専門職が連携して患者さんに必要な治療・ケアを施していくこと。加藤さんの「私のチーム」のイメージは少し違う。
メディカルスタッフが主力なのは同じだが、家族や友人、病気を通じて出会った仲間たちも含まれる。そして、援助が必要なタイミングを専門職が決めるのではなく「いつも私が中心となり、必要なタイミングで、必要な人に助けを求めて、助けてもらうチーム」なのだという。患者の主体性をこれだけ言語化できる人はまだ少ない。
「今できること」に全力で向き合い、AYA世代(15~39歳に発生したがん患者)のコミュニティの代表も務める加藤さんのがんとの向き合い方を紹介したい。
「がん家系」で驚かなかった 超早期の乳がん発見
4月23日、名古屋市で「がんを生きる─地域共生の視点から」というテーマのシンポジウムが開かれた。「NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク」という団体が、9月に名古屋で開催する全国のつどいのプレ大会として開いたシンポで、私が企画者とコーディネーターを務めた。
シンポジストとして加藤さんにも出ていただいたのだが、このとき加藤さんは左大腿骨の骨折予防の補強手術をしたばかりで、大学病院に入院中だった。病室からのオンライン発表で「私のチーム」や自身の人生への思いを語っていただいた。同ネットワークのYouTubeでも配信されている。
まず知っていただきたいのは、加藤さんが最初に診断を受けたときから、とても主体的な患者だったことだ。
親族にがんになる人が多い、いわゆる「がん家系」だった。「私もいずれはがんになるのかな」と思い、早くから子宮がん、乳がんの検診を受けていた。
31歳になって間もなく、検査で超早期の乳がんが見つかった時も驚かなかった。告知された時に、ウケを狙って「がーん」と言ったら、主治医の女医さんに「大丈夫?」と真顔で心配されて、ちょっと悔しかった。
切除手術と放射線治療を受けたが、34歳で局所再発した。この時にまだ保険の効かなかった遺伝子検査を自費で受け「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と診断された。同じ病気の診断を受けていたハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーさんの乳房予防切除が話題になった年だ。
局所再発を知って加藤さんは「がんとは切っても切れない関係なんだと思いました」という。特に悲壮感はなかったが、今できることをやろうと思った。