インテルは2月、量子スタックを完全にシミュレートするソフトウェアパッケージをリリースしていた。一方、競合のIBMは先週、量子テクノロジー研究において大きな進展があったとの論文を、カリフォルニア大学バークレー校と共同で科学誌ネイチャーに発表している。
さらに、グーグルやマイクロソフト、アマゾンなどの大手もこぞって、この分野の開発に取り組んでいる。量子コンピューティングは、人工知能(AI)や化学シミュレーション、暗号化などを大きく飛躍させることが期待されている。マッキンゼーは今年発表した報告書で、量子コンピューティング市場の規模は2040年までに900億ドル(約12兆6000億円)を超え、生み出される経済価値が数兆ドルに達する可能性があると推定していた。
古典コンピューターで扱われるビットは、情報の最小単位を0か1だけで表しているが、量子ビット(qubit)では、0と1のほか、0と1とを重ね合わせた状態も表すことができ、従来とは比較にならないほど高速な並列計算が実現できる。しかし、量子ビットは非常に壊れやすいため、エラーが発生しやすく、拡張が難しいという欠点がある。
そのため、量子コンピューターの実用化にはまだ数年かかるとみられている。これは特に、マイクロチップ上の集積回路やトランジスタにほぼ限定される古典コンピューティングとは異なり、量子コンピューティングには複数のハードウェアソリューションの候補があり、それぞれに長所と短所があるためだ。