僕はその一つの手段として、逆輸入に可能性を感じています。海外には日本の価値やそのストーリーをちゃんと伝える場所があり、それに対して価値を見出せる人たちがいる。そこを経て、日本に戻って来る。本末転倒であるような気はしますけど。杉本さんは今後どのようなイメージをお考えですか。
杉本:やっぱり日本人に食べてもらいたいので、海外で人気が出て、セレブが食べているよといった情報が、そのきっかけになればいいなと。
今は、2020年に発売した「シイタケパウダー」に力を入れています。「シイタケパウダー」は乾燥椎茸を粉末状に砕いたもので、外国で売れていたので自分たちもやってみようじゃないかと始めました。
僕らの椎茸は森の中で栽培するので土や葉っぱが付着しています。それを近所の障がい者施設の利用者の方々に1つずつブラシで徹底的に綺麗にしてもらい、砕いて作っています。試しにアメリカのアマゾンに出してみたら爆発的に売れて、ずっと売れ続けています。パウダーの方が使いやすいという意見も多くて、僕らが想定していなかった使い方をする人たちがいることもわかりました。
将来的には、「杉本さんのやり方って面白い」と思った同業他社にどんどん入ってほしいんです。そうすれば日本全体の生産を維持していけるでしょうから。一方で、これから出て来る椎茸に負けないバリアとして有機栽培に取り組んでいます。
椎茸は農薬が使えないのでほぼ有機栽培なのですが、残念なことに海外で重視されている有機認証を取得していません。そこで2018年から椎茸を栽培する種駒を全て有機に変えました。
椎茸のほだ場は6年間で1周するので、2024年にはほぼ全部が有機になります。うちに来る農家さんが手を挙げさえすれば有機になる状態をつくることができたので、例えば600軒のうち3分の1でも有機になれば、それは世界最大の有機認証を持つ干し椎茸の産地になるわけです。
こうなりたいと思えたのも、常に高千穂で椎茸を作っている人たちがいることが価値であることに気づいたからです。ゼロから作ろうと思っても絶対に真似できない価値ですからね。真似されないということは、世界で戦っていくうえで大きな強みです。ここでしか買えないのですから。
日本の農家さんが一生懸命つくった果物が海外で大量にコピーされて価格を下げられているのを見てきました。そんな風にならないように、日本の外に出て自分たちがつくっているものの価値に気づいた人間は責任をもって守っていかなければならないと思っています。