通常展示会では相手の国のバイヤーと商談しますが、バイヤーが僕らの椎茸を試食して「美味しいね」とか「いいね」と言ってくれても一向に商売にならないんです。これも海外に出てわかったのですが、そもそも海外のスーパーマーケットには乾燥椎茸が置いていないので、バイヤーもどうやって卸せばいいかわからない。だから買わない。
そこでアマゾンで「ドライドシイタケマッシュルーム」と検索してみると、ものすごい数が出てきました。でもラッキーなことに、全部が中国産。ここに出せば、少なくとも1%ぐらいの人は日本の椎茸を買うだろう。アマゾンでの販売はそういう安易な考えからスタートしました。
展示会でも「アマゾンで買えますよ」と言えば、「じゃあ買おうかな」となる。中間業者がいなくても販売できるんです。ですから直接購入してくれる消費者がたくさん来る展示会は非常に大きなビジネスチャンスなのでやりがいを感じています。
中道:前回のお話もそうですが、やはり一歩踏み出してみて、答え合わせをしながら磨いていけばいいんですよね。失敗から学ぶことは多いし、その学びを次に活かせばもっと良くなるのに、日本人には“失敗してはいけない”という足かせがあります。逆に言えば、そこさえ突破できればチャンスが生まれます。
杉本:最初の一歩を踏み出す時のハードルは大きいかもしれませんけど、踏み出してしまえばその先のハードルはそんなに大きくありません。僕らは九州の山奥の小さな会社なので、使える手段はあまり多くありません。輸出も1000万円を超えるまでは日本郵政の国際宅急便を使っていました。全国どこでも、平等にチャンスはあると思います。
中道:日本中の農家や中小企業の人たちに聞いていてほしいお話です。勇気が湧いてくるはずですから。
杉本:海外に出て感じるのは、やっぱり「Made in JAPAN」というのはすごいブランドだということです。
中道:杉本商店は、1950年代から生産者さんが持ちこんだ椎茸を全部現金で買い取ってきた歴史がある。そういうことを大切にする日本人が作るものというのは、よほどのことがない限り変なものではないというイメージが海外にはありますよね。
杉本:日本の農業は今、そういう歴史が途絶えようとしている非常に大きな危機的局面だと思います。
昔から続くこんな素晴らしいものがあるのだから、新しい売り方やアイデアをもってすれば、もっとこんな風に売っていけるんじゃないかという人たちが出てきてほしいですし、自分たちがそのきっかけになれたらいいなと思っています。