PGAツアーとLIVゴルフの「電撃統合」から目が離せないワケ

統合は未だ「先行き不透明」 米議会が調査を開始

中東の主を自負するサウジ政府は、ゴルフのみならず、クリスティアーノ・ロナウド獲得が記憶に新しいサッカーやF1といった国際的スポーツへの関与を強め、是が非でも五輪開催を実現させるべく、すでに積極的に動いていると言われる。

ジェンダー差別や2018年のジャマル・カショギ記者殺害事件といった人権問題、9.11に纏わる嫌疑など、自国へのネガティブなイメージを払拭するための「スポーツ・ウオッシング」につぎ込まれる豊富な資金力に対抗するよりも、迎合が妥当としたモナハンの判断が、今後どのような展開を見せるのか。世界が注目している。

ダンの投資銀行は旧ワールド・トレードセンターに本社を置いていたことから9.11で66人の社員を失っている。偶然ゴルフ絡みで出社していなかったダンは、悲劇を乗り越えようとの行動で会社を更に飛躍させ、ウォール街の英雄とも評価されてきた。その人物が、サウジ政府系のPIFとPGAツアーを結びつける役を演じた皮肉に違和感を抱く者は少なくない。

バイデン政権の動向にも注視が必要だ。対サウジ、独占禁止法について厳しい姿勢を堅持しつつも、常に様々な戦略調整が図られている。

また、今回の統合に関して、米司法省が独占禁止法上の懸念について調査するとウォールストリート・ジャーナルが15日に報じた。同じく15日、米上院財政委員会のロン・ワイデン委員長(民主党)が、PGAツアーの非課税・非営利団体としての地位を脅かす可能性があるとして「幅広く」調査を行うと発表している。

12日にも上院常設調査小委員会が、外国政府機関による重要な団体への支配がもたらすリスクについて調査するとし、リチャード・ブルーメンソール上院議員(民主党)はモナハンとノーマンに、統合に関連する文書と通信の提出を求めている。

サウジ政府の影響力と米国に与えるリスクが懸念されている。

因みに自身の所有するゴルフクラブでLIV大会を開催しているトランプ前大統領は、統合の発表に「素晴らしいニュース」とSNSで祝福のコメントをしている。

選手たちの意向とはまた別の大きな力が、今後の新組織、ツアートーナメント運営の行方を左右する可能性がある。
写真左から)ドナルド・トランプ元米大統領、ヤセル・ルマイヤンPIF総裁、グレッグ・ノーマンLIVゴルフCEO(Photo by Chris Trotman/LIV Golf via Getty Images)

写真左から)ドナルド・トランプ元米大統領、ヤセル・ルマイヤンPIF総裁、グレッグ・ノーマンLIVゴルフCEO(Photo by Chris Trotman/LIV Golf via Getty Images)

モナハンは療養、選手たちは全米オープンへ

予断を許さない状況のまま、モナハン・コミッショナーは13日、健康上の理由により一時職務を離脱したといい、選手たちは今週全米オープンを迎えている。

123回目を数える今大会は、メジャー初開催の超名門コース、ロサンゼルス・カントリークラブが舞台だ。

日本からは松山英樹、石川遼、永野竜太郎、桂川有人が出場し、松山英樹がブルックス・ケプカ、ロリー・マキロイと同組スタートなど、予選ラウンドから本来の見どころが満載だ。

選手たちのプレー、今後の統合、ゴルフ界の動向から目が離せない。

連載:スポーツ・エンタメビジネス「ドクターK」の視点

文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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