AI

2023.06.15 13:30

セールスフォースが描くAIファーストの企業像、「AIがあらゆる場所に」

ライバルの動き

これは大胆かつ包括的なビジョンだが、IBMなど他の大手ソフトウェアベンダーとの競争もある。

IBMのSVPでチーフ・コマーシャル・オフィサーであるロブ・トーマスは「私たちは、生産性と価値実現までの時間が迅速に向上する分野を追求します」という。「私たちは、基盤モデルに大きな可能性を感じています。このモデルは、リーダーがAIを導入してビジネスのあり方を根本的に変える際に、再利用可能で最小限のトレーニングで済むからです」

こうしたセールスフォースのビジョンは、どの企業も無視できないAI軍拡競争における開幕戦の1つだ。

すべてのソフトウェアデモが初めはすばらしく見えるのは事実だが、新しいイノベーションと実際の現場でのビジネス価値の間には常にタイムラグがあり、一部のはなばなしい約束は現実化しないこともある。しかし、大規模言語モデルのAIシステムが早い段階でも非常に印象的な結果を示していることも事実だ、セールスフォースが示したものは、確かにある程度の産みの苦しみをともなうだろうが、明らかに多くの重要なビジネスプロセスを大幅に加速させるだろう。

このような技術を採用しない企業は、取り残される危険性がある。

セントリック・コンサルティングのAI専門家であるジョセフ・アワーズは「AI駆動の機会を採用し、それを効果的に使いこなす方法を学ぶ企業は、適応力のない競争相手、絶滅するであろう競争相手を凌駕するでしょう」という。

しかしながら、リスクもある。

データ分析およびAIベンダーのAltair(アルテア)が最近実施した調査によれば、経営陣の回答者の4人に1人が、自社のAIプロジェクトの半分以上が失敗すると答え、42%が少なくとも1つのプロジェクトが失敗したと答えている。ワークフローやプロセスには多くの変更がともない、それらにはリスクが無いわけではない。

現在、生成型AIが活用されている分野

とはいえ、AI は多くの場合、人材が不足していたり​​、興味を持つ層の範囲が限られているシナリオに便利に利用されている。たとえば、2016年にAP通信が利用し始めたAIによるマイナーリーグの野球の記事がある。これらの記事の準備には、人間のライターの時間を正当化できるだけの十分な需要がなかったのだ。

同様に現在、すばらしい顧客サービスも不足している(最後にモバイルキャリアやテレビサービスに2時間かけて通話したときを思い出してみてほしい)。

私がセールスフォースの新しい生成型AIサービスとサポート製品をみて思ったことは、サービス担当者が同時に対応できる人数と提供できるヘルプの質を大幅にスケールアップするのに役立てられるのではないかということだ。これは、さまざまなアプリケーションや業界での実践を通じて証明される必要があるが、もしそれが正しければ、文字どおりゲームチェンジャーとなるだろう。

インフォシスのエグゼクティブVPであり、AIと自動化の責任者であるバラクリシュナ・Dは「エンドツーエンドのAI統合ワークフローは、応答時間の大幅な改善、柔軟性の向上、リスクの軽減、より速い実験の促進、市場投入までの時間の短縮をもたらします」という。
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翻訳=酒匂寛

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