マーケティング

2023.06.16 09:00

​​「切り抜き動画」は新規ファン獲得に必須 成功の秘訣は流通サイクル

露原直人

rafapress / Shutterstock.com

2022年の流行語として各所で注目を集めたのが「タイパ(タイムパフォーマンスの略)」である。際限なく増え続ける情報流通量に対して、私たちの可処分時間は有限なので、必然的に時間対効果を求めてしまうというわけだ。もちろん、このタイパは費用対効果を意味するコスパからの着想による言葉だ。
 
では、タイパが良いとはどういうことか。このテーマひとつで大量に考察を重ねることができるが、単純化すると「面白い箇所、有用な箇所がすぐわかる」ということだ。

タイパ派が支持

ショート動画はタイパが良いといわれるが、それはテーマの提示から結論(オチ)まですぐ到達するようなプロットのもと、制作されているためである。ショート動画クリエイターは、つまらないシーンを1秒でも挟んでしまえば、そこでスワイプ(離脱)されてしまうことを熟知している。
 
そのように、もともとタイパが良くなるように作られている動画に加えて、いまショート動画プラットフォームで頻繁に見られるのが、長尺の動画の面白い箇所だけをつまんだ「切り抜き動画」だ。著作権に引っ掛かることをいとわず、テレビ番組等を無断で切り抜いているものも一部存在するため、その適性度合いについては別途議論が必要だ。ただ、ここでの文脈に照らすと、長い時間をかけて見るものが短時間で済むとなれば、よりタイパが改善されていると評価することができるだろう。
 
また、切り抜き動画が隆盛しているのは、ゼロから動画をつくることができない人でも発信できるためでもある。「つくる」よりも「えらぶ」方が、ハードルは低い。誰もが切り抜き動画の発信者になれること、さらに受け手にとってもタイパが良いことによって、視聴数・視聴完了率が上がり、アルゴリズムによってより一層レコメンドされる。もちろん、当該コンテンツの著作者自身が切り抜き動画を作成し拡散すること自体は何ら問題はなく、非常に有益なプロモーション手法である。
 
つまり、ショート動画領域の主柱のひとつは、間違いなく切り抜き動画なのだ。
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文=天野彬 編集=露原直人

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