マーケティング

2023.06.16 09:00

​​「切り抜き動画」は新規ファン獲得に必須 成功の秘訣は流通サイクル

切り抜き動画で新規ファン獲得が有利に

企業やブランドのショート動画活用の動きも広がってきている。その中で切り抜き動画に絞ると、やはり元となるコンテンツを持っているところほど目立った取り組みをしているようだ。
 
例えば、2022年大ヒットしたドラマ「silent」は公式TikTokで、番組ハイライトを切り抜き動画のかたちで発信した。また人気バラエティ「突然ですが占ってもいいですか?」も、番組の見どころをTikTokらしいトンマナで切り抜き動画を公式アカウントから発信。それらが導線となったことで、どちらも見逃し配信サービス「TVer」で記録的な再生回数を獲得した。
 
ドワンゴとKADOKAWAは、アニメ「邪神ちゃんドロップキックX」の二次創作ガイドラインを公開。切り抜き動画や解説・考察動画を公認したうえで、その動画収益をクリエイターと製作委員会とで分配する仕組みとした。2000年代から続く、オタク的な二次創作カルチャーとの親和性を汲んだ打ち手と言えるだろう。
 
その他、企業の取り組みとしては、TikTok等でライブ配信をした後、そのハイライトを切り抜き動画にして、コスパ良く上手に活用する取り組みも増えてきた。
 
このようなコンテンツ事業者の視点に加えて、いまは個人でも人気を獲得するうえで切り抜き動画が欠かせなくなっている。
 
2016年以降、VTuber業界の黎明期をけん引したのは、キズナアイ等に代表される「VTuber四天王」で、つくりこまれた中尺の動画を特徴としていた。一方で、2020年頃から勢力を増していった事務所に所属する個人VTuberが得意としたのが、ライブ配信&切り抜き動画である。エンゲージメントの高いファンが配信に参加し、その中で面白かったシーンを切り抜き動画として発信したことで、新しいファンの獲得につながっていった。いわば、推し活としての切り抜き動画である。
 
またひろゆき氏や成田悠輔氏のように、近年クローズアップされることの多い著名言論人が有名性を獲得するに際しても、切り抜き動画が大きく寄与していたのは間違いない。
 
切り抜き動画によって新規ファンが生まれ、ファンが増えるとさまざまなイベントや番組に呼ばれ、さらに切り抜き動画が流通し……というサイクルが回っていく。いまや切り抜かれなければ勝負の俎上に上がれないのだ。
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文=天野彬 編集=露原直人

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