それを受けて、多くの製造業の企業が自社のサプライチェーンの見直しを迫られている。複雑化する地政学リスクや経済安全保障の情報をどのように可視化するのか。課題を抱える企業は少なくない。
FRONTEOは、独自の数理モデルを使ったAI「KIBIT」を自社開発。リーガルテックを中心に、ビジネスDXやライフサイエンスなど幅広い領域分野で活用が進んでいるが、2021年から安全保障の分野でのサービス「KIBIT Seizu Analysis」の提供を開始し、地政学リスクへの関心の高まりと同時に企業からの引き合いも増えているという。
企業にとって、経済安全保障の新しいAIソリューションはどのような武器となるのか。担当する取締役の山本麻理に話を聞いた。
──FRONTEOは、なぜ安全保障分野にAIを活用しようと思ったのでしょうか。サービスの開発のきっかけについて教えてください。
日本企業をいかに海外の訴訟リスクなどから守り、リスクとうまく戦えるかという観点で、FRONTEOがスタートしました。
もともと、海外の訴訟で、日本の企業をどう守るかという問題がありました。例えば、米国での訴訟手続きにあるeディスカバリと呼ばれる電子証拠開示手続きで、日本企業を十分にサポートできる会社やソリューションがほとんどありませんでした。
電子証拠開示手続きでは、自社のメールや記録、やり取りなどの電子データを保全して、訴訟に使える法的証拠を見つけるのですが、大量のデータの中から証拠となる文書を見つける必要があるため、弁護士から解析をするベンダーに依頼をされる場合が多くあります。
データの中から、例えばカルテルや規制や内規に引っかかる部分はないのか、贈収賄や談合が疑われる文章はないかということを探して、開示し合うという制度です。しかし、そういったベンダーでは、日本語の理解レベルが大学時代に少し日本語を勉強しましたというくらいの外国人が「解析している」ケースが散見されます。
そうすると、日本語の理解の程度が原因で裁判に負けて課徴金を払う、というようなことが起きかねません。このように、裁判で不利な立場に置かれる日本企業が多い要因として日本企業をサポートする日本のベンダーが不足していたことが挙げられます。そこで、サービスを始めたという経緯があります。
FRONTEOは、リスクとチャンスを情報の中から可視化して、企業が現状を把握するサポートをやってきたことから、その文脈で経済安全保障も自然と入ってきました。