鉄道の開通でビジネスチャンスが到来
中国ラオス鉄道・ルアンパバーン駅駅舎「中国ラオス鉄道」は、中国雲南省の崑明市からラオスの首都ビエンチャンまでを結ぶ鉄道で、今年4月13日に全線(全長1035キロメートル)が開通した。ラオスのGDPの3割に達する約60億米ドルかけて敷設されたという。
これにより、中国から東南アジア諸国への物流網拡大による経済効果が見込まれている。ただこれには裏話があり、対外債務の約6割を中国が占める状況下で、建設費の7割が中国からの貸し付けで賄われているため、同時に「債務の罠」に陥ることも危惧されている。ラオスにとって諸刃の剣となり得るプロジェクトである。
とはいえ、ルアンパバーンの観光業界に限っては、チャンスが生まれるきっかけとなった。中国との国境の町ボーテンから約3時間半の距離になったため、今後中国人観光客の増加が見込まれる。
加えてラオス国内でも、ビエンチャン〜ルアンパバーン間に鉄道が通ったことで、2時間弱で移動できるようになった。以前は車で約8時間、あるいは空路で移動するしかなかった。その効果はすでに表れており、隣国タイや国内観光客が目に見えて増加している。
ルアンパバーンではそんな新規顧客を受け容れるため、飲食店が様変わりしている。元々は大半がベトナム人やタイ人のオーナーだったが、いつ明けるともしれないロックダウンが施行されたことを機に、彼らは店舗を手放して自国に帰ってしまった。
そして現在、新オーナーの下で内装を今風にリノベーションしたり、コロナ禍に普及したフードデリバリーにも対応したメニューを準備するなど、旧来とはアプローチが異なる店舗が増えている。
コーヒー豆農家と豆の品質をチェックする元川将仁さん(右)
ラオスでカフェを始めた日本人
2022年8月、ルアンパバーンの中心部でカフェ「Lulalao Coffe」をオープンした元川将仁さんも新オーナーの一人だ。社会科学分野の研究者としてラオスを何度も訪問していた元川さんは、JICAの海外協力隊員として2020年1月にラオスに赴任。任期を終え2021年7月に一度日本に帰国した後、再びラオスに戻り起業した。
カフェ起業のアイデアを思いついたのは、研究者時代にラオスを訪問した時だったという。元々コーヒーが趣味だったこともあり、ラオス南部でコーヒー豆が栽培されていることを知ったが、同時に国内にカフェが少ないことに気づいた。当時はまだラオスの人々にコーヒーを飲む習慣が根付いてなかったのだ。
その後海外協力隊員として活動していく中で経済発展を肌で感じ、近い将来ラオスにもおいしいコーヒーを求める人が増えると確信した。そこに襲ってきたコロナ禍。海外協力隊員としての活動は、一時帰国を余儀なくされるなど完全燃焼とはいかなかった一方、最初の一歩を踏み出すきっかけにもなった。