「CorporateRebels」は直訳すると、「会社への反逆者たち」という意味だ。「伝統的なヒエラルキーや官僚主義と闘っている『反逆者』たちを探すことが、僕たちの創業当初からの目的でした」と、オランダの地方都市、アイントホーフェンを拠点とする同社共同創業者のピム・デ・モーレは語る。
モーレは工業エンジニアリングを、共同創業者のヨースト・ミナーはナノテクノロジーを大学で学び、それぞれが専門性を生かして、大企業で働いていた。しかし、入社して3年がたち、「ほとんどの人が経験するように」(モーレ)、仕事の内容自体はとても面白かったものの、自分たちをまるで子どものように扱い、自由のない官僚的で階級主義的な会社のシステムにフラストレーションがたまっていった。
2016年、モーレとミナーは思い切ってそれぞれの会社を辞め、まったく正反対の働き方をしている企業を探し求め、世界中を飛び回ることにする。「他に選択肢はないのか?監視やコントロール、官僚主義以外に、もっと個人や人間に焦点を当て、適切な判断ができる責任ある大人として認め、組織づくりをしている会社はないのだろうか。
それが僕たちにとってのシンプルな問いだった」とモーレは語る。パタゴニア、Zappos、ハイアール、Spotifyなどこれまでに世界100以上の最先端企業を訪れ、キーパーソンに話を聞いた。現在も世界を旅しながら、新しい時代の組織や働き方についての情報を発信するオンラインメディアを運営している。
アジアのカリスマ経営者に会う
なかでも中国の電機メーカー、ハイアールは、これまでに10回以上も現地を訪れて取材、リサーチをした最も示唆深いケースのひとつだ、とモーレは話す。日本では「人単合一モデル」として知られるが、約8万人の従業員を、4000もの10~15人単位の小さな企業体に分け、彼らは人事からリーダーの選定、利益の分配、戦略などを決めることができる。「製造業という重厚で伝統に縛られた業界、しかも大企業で、階級主義的ではなく、ものごとの人間的な側面に焦点を当てている、進歩的な働き方をしているアジアの企業があることは、驚きだった」(モーレ)。2016年から何度も手紙や電話でアタックし、ようやくカリスマ経営者、張瑞敏(チャン・ルエミン、21年にCEOを退任)に会えることになった。